先日、シーテッドロー(背中のエクササイズ)について、
クラブの会員様からご質問を頂きました。
その内容は、
『いまいち成果(肥大)がでなくなったので、やり方が良いか見てほしい』
というものでした。拝見すると、
背中は発達していますし、
フォームはストリクト、
丁寧に短縮と伸張をくり返しています。
要は、非常に良いやり方でした。
発達した背中は、間違いなく、この賜物です。
なので、効果が無かったわけではなく、
同じやり方を長期間行った事で、
体がその刺激に慣れてしまっただけ
と判断しました。
慣れた刺激は体が適応済みなので、
発達が鈍化します。
刺激を変えるため、この会員様に
『オラオラ系シーテッドロー』を
アドバイスさせて頂きました。
オラオラ系?笑
サラリーマン時代の私が、
格闘技からヒントを得て
行っていたトレーニングスタイルです。
見た目の印象からオラオラ系と呼んでいました。笑
本日は、
オラオラ系ローイング・プルダウンについて説明します。
同じエクササイズでも行い方を変える事で
新鮮な刺激を体に与える事ができる一例です。
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格闘技からヒントを得る
パンチが強い格闘家の背中は発達しています。
その理由がトレーニングに応用できます。
近畿大の谷本道哉準教授著『力学でひもとく格闘技』
や
中部大学の吉福康郎教授著『格闘技の科学』
で述べられているとおり(どちらも読みやすいです)、
パンチ動作で勢いよく押し出された腕を止めるブレーキとして
背中の筋肉が働き、肩関節が守られています。
下の図は、ストレートパンチ(ミット打ち)時の
各筋肉の筋電図結果です。↓
出典:谷本道哉準教授著『力学でひもとく格闘技』
※グラフの波形が大きいほど筋活動が大きいことを示す
このとおり、
広背筋は、パンチ動作のインパクト直前から
ブレーキとして働いていることが分かります。
この時、背中の筋肉は瞬間的に
強く引き伸ばされる負荷を受けて
微細な筋損傷を生じます。
筋損傷は筋発達要因の1つです。
パンチ力が強い選手ほど、
背中が発揮するブレーキ力も増し
筋損傷も生じやすく、
激しく背中を鍛えることとなり
自然と背中の筋肉が発達していきます。
これを背中のエクササイズである
シーテッドローやラットプルダウンに
適用すると、
勢い(加速度)をつけてウェイトを戻し、
(=勢いよく前方又は上方に出される腕)
それを背中で受け止める
という動作で行うことになります。
勢い(加速度)がついたウェイトは、
そのウェイト重量以上の負荷となり、
それを受け止める事で、
筋発達要因の1つ『筋損傷』を
背中に生じさせて筋発達を狙うわけです。
オラオラ系の具体的なやり方
具体的にどう行うか?
シーテッドローやラットプルダウンを例にしますと、
以下のSTEP 1~4をくり返します。
step
1ストリクトでは扱えない高重量を反動を使ってでも爆発的に引く
速筋線維が優位に働く
step
2引ききって一瞬止める
一瞬、背中の筋肉に強い張力を発生させる(筋発達要因:メカニカルテンション)
step
3脱力してウェイトを戻し始める
ウェイトに勢いがついて戻る(ウェイトが重力によって加速しながら戻る)
step
4勢いがついて戻るウェイト(=その重量以上の負荷)を背中で受け止める
速筋線維が優位に働き、背中の筋肉を微細に傷つける(筋発達要因:筋損傷)
但し、受け止めの際、
ボトム位で一気に受け止める(=急ブレーキ)
ように行わないで下さい。
危険ですし、
東京大学 石井教授著『石井直方の筋肉の科学』
によりますと、急ブレーキをかけるような
過激なエキセントリック刺激を繰り返す事は
mTORのリン酸化を下げ、
タンパク質の分解を進めてしまい、
筋肥大にマイナスになる可能性があるようです。
(マウス実験による結果)
なので、
なめらかなブレーキングでボトム位で止まる
といった感じで行うと良いです。
以上のとおり、オラオラ系の利点は、
筋発達要因『筋損傷』が得やすいだけでなく、
優位に速筋線維を働かせることができ、
筋発達要因『メカニカルテンション』も
発生させる事ができます。
やり方のイメージに近い動画がこちらです。↓
出典:Muscular Development Magazineチャンネル Branch Warren | Olympia Bound Back Training with Johnnie O. Jackson
なんとなく、オラオラ系と呼ぶニュアンスがわかって頂けるかと。笑
(道具は大切に扱いましょう。笑)
こちらの動画もご覧ください。↓
ミスターオリンピアを8連覇した
ロニー・コールマンさんの
エンド・オブ・バーローイングです。
出典:Muscleologistチャンネル Ronnie Coleman Mid Back Workout
こちらもオラオラ系に認定です。
これら着目すべき共通点は、
勢いよく戻るウェイト(=その重量以上の負荷)を受け止めている点です。
筋肉の短縮と伸張を丁寧に行うストリクトスタイルとは異なり
オラオラ系は一見すると雑な感じを受けますが、
上記した利点を有するので、
筋肥大に有効なトレーニングスタイルの1つとして
成立します。
このやり方は、背中だけでなく、
他部位のエクササイズにも適用可能です。
また、このオラオラ系、
ストリクトスタイルをやり込んでいる方にとって
非常に新鮮刺激になり得ます。
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