私は広背筋をザックリと上部、中部、下部の3つに大別しています。
広背筋の代表的な種目を行っていても、上の図で示した様な中部や下部エリアの短縮・伸張刺激は得られにくいですが、それを改善するコツが複数あります。
例えば、負荷掛け方向や引く方向を繊維方向に合わせたり、収縮可動域をしっかりとる等々、いろいろあります。
本日は、その中から個人的に好んで活用しているコツ『体幹を回旋させたまま広背筋種目を行う』を紹介します。
このコツは、いくつかの種目紹介記事で示していますが、他多数の種目に適用可能なものなので、背中のトレテクとして記事にします。
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体幹を回旋させて広背筋種目を行う
体幹を回旋させて(捻って)広背筋種目を片側ずつ行います。
右広背筋を刺激する場合
『上半身を正面に向ける』+『骨盤から捻って下半身を右45°程度に向ける』の姿勢を維持しながら、種目の引き戻し動作を右で行なう。
左広背筋を刺激する場合
『上半身を正面に向ける』+『骨盤から捻って下半身を左45°程度に向ける』の姿勢を維持しながら、種目の引き戻し動作を左で行なう。
こうすることで、広背筋中部・下部エリアの収縮が引き出せ、収縮感が強く得られます。
具体例として、プルアップを例に説明します。
具体例:体幹を捻ったままプルアップを片側ずつ行なう
右の広背筋を刺激する場合で説明します。
<右の広背筋を刺激する場合>
左の広背筋を刺激する場合は、上半身正面で、下半身は骨盤から捻って左45°程度向けた状態を維持しながらプルアップを行います(力の入れ具合は、右2割左8割といった感じ)。
こうすることで、通常のプルアップでは与えにくい広背筋中部~下部エリアへの刺激が高まります。
広背筋の収縮が引き出せる理由
定かではありませんが、個人的に考えている主な理由は、『広背筋が伸びて筋活動しやすい状態になっているから』だと思います。
筋肉には、長く伸ばされると動員されやすく、短く緩むと動員されにくい性質があります。
有名な例で言いますと、上腕二頭筋種目の『インクラインカール』です。これは上腕二頭筋が伸びた状態で行なうカール種目で、私の場合、上腕二頭筋の収縮感が通常のカール種目より強く得られます。
これを広背筋に当てはめた一例が今回紹介している行い方だと考えていて、体幹を回旋させることで広背筋を伸ばし、これを維持しながら広背筋種目を行います。
広背筋に限らず、予め筋肉を伸ばした状態を維持しながら種目を行うことは、筋繊維が動員されやすくなるので、その筋肉に効かせるコツになり得ます。
メリット
体幹を回旋させた状態で広背筋種目を行うことのメリットは2つあると思っています。
1つ目は、上述してきた通り、広背筋が動員しやすく、通常の行い方では刺激しにくい中部~下部エリアが刺激しやすいという点です。
2つ目は、通常の行い方で行なうより広背筋が伸びたい位置で負荷掛けできる点です。筋肉の伸展位側での負荷掛けと筋収縮は、筋肥大を促進する可能性があると考えています。
適用例について
広背筋を伸ばした状態で種目を行うために体幹を回旋させることは、多数の広背筋種目に適用可能です。適用例をいくつか紹介します。
1.アンダーハンド・プルアップ
個人的に最も好んで適用している種目です。
特に、戻し動作時(下ろし動作時)の刺激が強烈で、広背筋全体に強い伸張刺激が入ります。
<右の広背筋を刺激する場合>
- 上半身は正面、下半身は骨盤から捻って右45°程度向けた状態を維持したまま行う。
- 右手は逆手で握り、左手は姿勢維持のサポートなので順手で握る。
- 引き動作・戻し動作(下ろし動作)は、力の入れ具合を左2割右8割にして実施する。
- 戻し動作(下ろし動作)は非常に良い伸張刺激が入るので4秒程度かけ、引き動作は力強く一気に実施している。
- 戻し動作(下ろし動作)で右肘を軽く内に入れながら行うと、より強く伸張刺激が得られる。
2.プルアップ
前項で既出の種目です。
広背筋中部と下部の上側に短縮刺激・伸張刺激が入ります。特に、短縮刺激が強く得られる印象があります。
<右の広背筋を刺激する場合>
- 上半身は正面、下半身は骨盤から捻って右45°程度向けた状態を維持したまま行う。
- 右手も左手も順手で握る。
- 引き動作・戻し動作(下ろし動作)は、力の入れ具合を左2割右8割にして実施する。
- 引き動作で非常に良い短縮刺激が入るので、力強く一気に引き上げ、引き切った位置で2秒程度力を入れ続けている。戻し動作(下ろし動作)には2~3秒かけている。
3.フロントプルダウン
広背筋中部と下部の上側に短縮刺激・伸張刺激が入ります。
いろんなマシンでできますが、『ハンマー・フロントプルダウン』を例に説明します。
ハンマー・フロントプルダウン
<右の広背筋を刺激する場合>
- 上半身は正面、下半身は骨盤から捻って右45°程度向けた状態を維持したまま右で行う。
- 力強く一気に引き、引き切った位置で2秒程度力を入れ続けている。
- 戻し動作には3秒程度かけ、戻した位置(戻し切らず、負荷が広背筋に引っ掛かった状態)で1秒程度保持している。
- 戻し動作時は軽く肘を内に入れながら実施するだけでなく、肩を落としながら戻す。これにより、より強く伸張刺激が得られる(肩関節内で上腕骨の回転運動を引き出す)。
説明は省きますが、以下のように他マシンでも体幹を回旋させたフロントプルダウンはできます。↓
ハンマー・ワイドプルダウン
ハンドルと組み合わせて行っています。
<右の広背筋を刺激する場合>
ウェイトスタック・ラットプル
ハンドルと組み合わせて行っています。
<右の広背筋を刺激する場合>
写真を撮っていないので載せませんが、ケーブルマシンでもできます。
番外編
『ハンマー・ハイロウ』に『リボルビングカールバー』を組み合わせて行うバリエーションもあります。これも体幹を回旋させて行なうことで、広背筋により効きます。
この実施バリエーションは、上で示したマシンで行なう場合より伸張刺激が強くなる実感があります。
その理由は、『ハンマー・ハイロウ』の軌道と体前にあるパッド位置の相性が良いので、戻し動作でパッドが上体のストッパーになり、固定端として機能するからだと思われます。
筋肉を伸ばすには引張り側の逆側は固定する必要があり、これにより、筋肉が負荷によってしっかりと引っ張られます。
風変りなので”番外編”にしました。(笑)
4.シーテッド・ロウ
広背筋中部と下部の上側に短縮刺激・伸張刺激が入ります。特に、伸張刺激が強く得られる印象があります。
いろんなマシンでできますが、『ハンマー・ロウ』を例に説明します。
ハンマー・ロウ
<右の広背筋を刺激する場合>
- 上半身は正面、下半身は骨盤から捻って右45°程度向けた状態を維持したまま右で行う。
- 力強く一気に引き、引き切った位置で1秒程度力を入れ続けている。
- 戻し動作には3秒程度かけ、戻した位置(負荷が広背筋に引っ掛かった状態が抜けない範囲で戻す)で2秒程度保持している。
- 戻し動作は、パッドに上体をあずけて固定端をつくった状態で行なう。筋肉を伸ばすには引張り側の逆側は固定する必要があり、これにより、筋肉が負荷によってしっかりと引っ張られる。
同じ意図で行なっているか不明ですが、Christopher Lewisコーチが同じ様な行い方でハンマー・ロウを実施している動画がありますので、参考に載せておきます。
<1:45~3:45>
出典:Rodrigue Chesnier IFBB RROチャンネル Training back with Psychofitness21 at coast and a little surprise
説明は省きますが、以下のように他マシンでも体幹を回旋させたシーテッド・ロウはできます。↓
ハンマー・DYロウ
<右の広背筋を刺激する場合>
ウェイトスタック・ロウ(可動軸下)
<右の広背筋を刺激する場合>
ウェイトスタック・ロウ(可動軸上)
<右の広背筋を刺激する場合>
5.ダンベルロウ
通常のダンベルロウでは、広背筋中部~下部エリアに短縮刺激は入りやすいですが、伸張刺激は入りにくいと思います。体幹を回旋して行うことで、伸張刺激が入りやすくなります。
<右の広背筋を刺激する場合>
上半身は正面、下半身は骨盤から捻って右45°程度向けた状態を維持したまま右で行う。
出典:Psychofitness21チャンネル Back Day with Mo at Psycho's Body Shop
動画はこちら↓
<5:43~7:43>
出典:Psychofitness21チャンネル Back Day with Mo at Psycho's Body Shop
6.ロータリートルソーマシン・ロウ
広背筋中部の伸張刺激が入りやすいです。
<右の広背筋を刺激する場合>
上半身は左向き、下半身は骨盤から捻って上半身に対し右45°程度向けた状態を維持したまま右で行う。
詳細は過去記事をご参照下さい。↓
続きを見る
【筋トレ】広背筋用ロータリートルソーマシン・ロウイング
7.ダンベルプルオーバー
通常のダンベルプルオーバーは広背筋全体に刺激が入りにくいですが、体幹を回旋して行うことで、広背筋全体に刺激が入りやすくなります。
<右の広背筋を刺激する場合>
骨盤から捻って下半身を右に向けた状態でプルオーバーを行う。プル動作・戻し動作(下ろす動作)共に、力の入れ具合は左2割右8割で実施する。
いきなり高重量で行なったり、セット数を多くしてしまうと、腰回りの筋肉の負担が増えて腰痛になる場合があります。行う場合は、重量やセット数を徐々に慣らしながら行ってください。
詳細は過去記事をご参照下さい。↓
続きを見る
【筋トレ】ダンベルプルオーバーで広背筋をより効かせよう!:ダンベルプルオーバーwith体幹回旋
骨盤・腰まわりのコンディショニング種目を導入
前項までの内容を見て頂いてわかると思いますが、不自然な体勢で行なう種目になります。基本的な種目と比較して、体に歪みを生じさせたり、不定愁訴を発生させるリスクがいくらか高まる様に思います。
このリスクを低減させる目的で、骨盤・腰まわりの緊張を解く(リセットさせる)様なコンディショニング種目の実施を推奨します。実施タイミングは、その日のトレーニングの最後で良いと思います。
私が取り入れている骨盤・腰まわりのコンディショニング種目を参考に紹介します。以下の順番で行なっています。
この内容は、パーソナルトレーナー木内周史さんが考案した『リラックスモーション・リリース』の一部で、『季刊パーソナルトレーニング2009冬第4号』に掲載されたものを利用させて頂いています。
1.つま先の開閉
- あお向けになって、両膝を肩幅くらいに開き、股関節(脚のつけ根)から動かしてつま先を開閉する。
- つま先だけの動きにならないように注意する。
- 30~50回実施。
出典:季刊パーソナルトレーニング2009冬4号 P108
2.うつ伏せお尻振り
- うつ伏せになり、両脚を肩幅くらいに広げる。腕は頭の近くのところで床につける。
- 腰をツイストするように、お尻を左右に振る。
- 30~50回実施。
出典:季刊パーソナルトレーニング2009冬4号 P109
3.うつ伏せかかと回し
- うつ伏せになって、片脚の膝を90°曲げる。足首は力を抜き、ブラブラの状態にする。
- この90°に曲げた状態のかかとの位置を円の中心として、大きく円を描く。
- 円を描く動作のなかで内側への動きはつくりやすいが、外側への動きが十分にできないことが多いので、外側への動きを意識して(強調する感じで)行うこと。
- できるだけ骨盤を揺らさないようにして行う。
- 左脚で内まわしを30~50回行ったら、右脚で内まわしを30~50回。次に、左脚で外まわしを30~50回、右脚で外まわしを30~50回行う。
出典:季刊パーソナルトレーニング2009冬4号 P109
4.うつ伏せ脚倒し
- うつ伏せになって、両脚をそろえて膝を90°に曲げる。
- 力を抜いた状態で左右交互に倒す。
- 力を入れてグイッと倒すのではなく、脚の重みで倒れるところまで倒し、倒れたときの反射を利用して上げ(このとき多少は筋力を使うが最小限にとどめる)、反対に傾けて同様に繰り返す。
- 30~50回実施。
出典:季刊パーソナルトレーニング2009冬4号 P110
5.あお向け両膝倒し
- あお向けになって両膝をそろえ、膝を約90°に曲げる。
- 『うつ伏せ脚倒し』と同様に、できるだけ脱力した状態で膝を倒し、反射の力を利用して膝を上げ(このとき多少は筋力を使うが、最小限にとどめる)、反対側に傾けて同様に繰り返す。
- 30~50回実施。
出典:季刊パーソナルトレーニング2009冬4号 P110
6.あお向け骨盤横上げ
- あお向けになって、両脚を肩幅くらいに広げ、真っ直ぐ伸ばす。
- 足を背屈(甲側に足を反らせる)させたほうの骨盤を頭のほうに上げる。足の裏を押され、股関節が押し込まれているイメージで骨盤を動かす。
- 反対側の足は底屈(足の裏側に曲げる)して、骨盤を脚のほうに下げる。足が引っ張られているイメージで骨盤を動かす。
- この動作を左右交互に行なう。
- 30~50回実施。
出典:季刊パーソナルトレーニング2009冬4号 P111
<姿勢変化で効かせる別パターン>
続きを見る
【筋トレ】広背筋に効かせるコツ②:『骨盤を側方傾斜させてプルダウン種目を行う』
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