前回の記事はすみませんでした(笑)。ボディメイクに全く関係ない内容を私の備忘録のために書いてしまいました。
本日も備忘録な内容なんですが、ボディメイクに関わる内容なので前回よりはマシかと。
栄養学、運動科学の研究者James Krieger氏。
この方はボディメイク(筋肥大や減量)に役立つ科学的な情報を積極的に発信しており、勉強させて頂いております。
そのJames Krieger氏のwebサイト『WEIGHTOLOGY』で、私にとって非常に興味深い内容がありました。それは、コンテストの減量法に加重着衣を活用した事例紹介です。
加重着衣とは以下のようなものです。↓
出典:WEIGHTOLOGY The Use of Weighted Apparel During Contest Prep: The Science and Practical Application
コンテストに向けた減量において加重着衣をどう活用するか簡単に説明すると、減量で減った分の体重(又それ以上の重量)を段階的に加重着衣で加重していく方法です。
皆様にも参考になると思いますので、このブログでシェアします。
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この記事のソース
先にこの記事のソースを示しておきます。James Krieger氏のwebサイト『WEIGHTOLOGY』のこの記事になります。
この記事では、ボディビル・コンテストに向けた加重着衣による減量の取組を紹介すると共に、この減量法の科学的背景と実践法を紹介しています。
実践者はバンタム級選手のEric Lee Salazar氏で、これまでの減量法ではなく加重着衣による減量法で調整を進め、2019年の以下NPCボディビルコンテスト バンタム級で見事に優勝しています(IFBBプロカードも取得)。
Southeast Texasチャンピオンシップ
USAチャンピオンシップ
詳細はソース記事を参照下さい。
コンテストの減量に加重着衣を利用する:行い方
コンテストの減量に加重着衣を利用する
- 週に体重の0.5~0.7%のペースで減量できる摂取カロリーで減量開始し、4週間程度実施。この期間は加重着衣は使用しない。(減量開始時の設定摂取カロリー算出はこの記事を参照。)
- 4週間後、加重着衣導入開始。4週間で減った重量又はそれより少し多い重量を加重着衣で加重して日々を過ごす。(いきなり重い加重着衣を使用すると疲労感や裂傷が生じるので要注意。)
- 加重着衣は起きている時間の90~95%着用し、頻繁に立ったり歩いたりして毎日過ごす。(1日1万歩弱程度)
- 追加で有酸素性運動を行う必要は無し。筋トレは勿論、行います。
- ※筋トレ中に加重着衣を着るかは記載なし。多分、加重着衣脱いでると思うが、できる種目は着たまま行うのもアリだと思う。
- 4週間程度毎に減った重量又はそれより少し多い重量を加重着衣で加重して、常に減量開始時体重又はそれ以上をキープする。
- この減量中は、最後まで減量開始時に設定した摂取カロリーのままにする。
- 減量が停滞した場合は、加重着衣の重量を増加又は加重着衣着用で軽いウォーキングを行う。
- それでも停滞が打破されない場合は、最終手段として摂取カロリーを減らす。(この減量法は、なるべく摂取カロリーを減らさずコンテスト調整を行うものなので、摂取カロリーに手をつけるのは最後。)
- 以上の要領をコンテストまで続けます。
- 最後の週は仕上がり次第で摂取カロリー増もアリ。
- カーボローディングを取り入れている方は、その週までにこの方法で減量を終了させてから通常通りにローディングフェーズに入れば良いと思う。
コンテスト終了し、体重を戻す方法は『直ぐに戻したい場合』『緩やかに戻したい場合(次のコンテストが控えている等)』の2つがあります。↓
直ぐに体重を戻す場合
- 減量開始時体重の時に摂取していたカロリーに直ぐ戻す。(要はなりたい体重に必要な摂取カロリーに直ぐ戻す。)
- 加重着衣もやめる。
緩やかに体重を戻す場合
- この減量の最終段階のカロリー摂取のまま加重着衣の重量を徐々に減らしていく。
- 例えば、この減量で4週間ごとに加重着衣の重量を増していた場合、2~4週間ごとに加重着衣の重量を減らしていく。
実際に行うとなると実現困難な感は否めませんね(笑)。ウェイトベストなど着用したまま仕事や生活をするわけですから。
また、この方法の人を対象にした学術研究は皆無でしょうし(だからといって効果が無いなんて事は勿論言えません)。
それでも、私にとっては興味が湧く方法です。
後で書きますが、数百キロカロリーでも多いエネルギー摂取で減量を進める事は、コンテストの減量においてメリットがあると感じるからです。
また、この方法は、減量停滞時の打開策の参考になります(打開策の引き出しは、多いに越したことはないです)。
この方法でコンテスト調整を実際に行い、見事な結果を出したEric Lee Salazar氏の実例がこれです。↓
コンテストの減量に加重着衣を利用する:Eric Lee Salazar氏の例
Eric Lee Salazar氏は加重着衣を活用して、以下の様にコンテストの減量を進めています。
※1:トレ内容
以下はトレ内容未記載。当然ですがコンテストに向けたトレは通常どおりに実施。
※2:トレ中の加重着衣
トレ中、加重着衣は脱いでいた様ですが(トレ動画でみたところ未着用)、定かではありません。できる種目は着けてた可能性もあり。
※3:就寝中の加重着衣
当然ですが脱ぎます。
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1最初の4週間の取組
減量の開始体重は165ポンド(約74.3kg)。
加重着衣は使用せず。
1日の摂取カロリーを2300kcalに設定し減量開始。
1日の歩数9500歩を課す。(万歩計計測)
出典:WEIGHTOLOGY The Use of Weighted Apparel During Contest Prep: The Science and Practical Application
設定した摂取カロリー2300kcalは、減量開始前の摂取カロリーから約300kcalを減らしたもの。
300kcal減で開始した理由は、1週間あたり体重の0.5%で減量を進めるため。筋量を残す減量ペースは、週に体重の0.5~0.7%減が最適。
この減量ペースで行う摂取カロリーの設定方法は、この記事を参照下さい。↓
続きを見る
【減量】減量時に極力筋量を残す!:減量ペースについて
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25~8週
減量開始から4週間経過し体重は、6.5ポンド(2.9kg)減り158.5ポンド(71.3kg)。
加重着衣12ポンド(5.4kg)を着て1日の大部分を過ごす。(毎日)
1日の摂取カロリーは2300kcalのまま。
1日の歩数9500歩を課す。(万歩計計測)
出典:WEIGHTOLOGY The Use of Weighted Apparel During Contest Prep: The Science and Practical Application
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39~12週
加重着衣を20ポンド(9kg)に増量して1日の大部分を過ごす。(毎日)
1日の摂取カロリーは2300kcalのまま。
1日の歩数9500歩を課す。(万歩計計測)
出典:WEIGHTOLOGY The Use of Weighted Apparel During Contest Prep: The Science and Practical Application
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413~16週
減量開始から12週間経過し体重は、15ポンド(6.8kg)減り150ポンド(67.5kg)。
加重着衣20ポンド(9kg)に加えて、両足首ウェイト8ポンド(3.6kg)を装着して1日の大部分を過ごす(毎日)。
1日の摂取カロリーは2300kcalのまま。
1日の歩数9500歩を課す。(万歩計計測)
出典:WEIGHTOLOGY The Use of Weighted Apparel During Contest Prep: The Science and Practical Application
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517週~コンテスト『Southeast Texasチャンピオンシップ』まで
はっきり記されていませんが、16週間経過した4月20日からコンテストの5月4日まで以下の様に取り組んだようです。
減量開始から16週間経過し体重は、19ポンド(8.6kg)減り146ポンド(65.7kg)。
加重着衣20ポンド(9kg)+両足首ウェイト8ポンド(3.6kg)に加え、腰巻ウェイト約7ポンド(3.2kg)を装着して1日の大部分を過ごす(毎日)。
1日の摂取カロリーは2300kcalのまま。
1日の歩数9500歩を課す。(万歩計計測)
出典:WEIGHTOLOGY The Use of Weighted Apparel During Contest Prep: The Science and Practical Application
このように、従来のカロリーを段階的に減らして調整する方法では無く、加重着衣の段階的な増量を主としたコンテストの調整法で(カロリー減は最初の4週間だけ)、5月4日の2019 Southeast Texasチャンピオンシップのバンタム級で優勝しています。
出典:WEIGHTOLOGY The Use of Weighted Apparel During Contest Prep: The Science and Practical Application
Eric Lee Salazar氏の通常の減量法では、コンテスト直前段階の摂取カロリーは1400~1500kcalまで減らし調整しているとの事ですが、加重着衣による調整法によって摂取カロリー2300kcalを下回る事はありませんでした。
Eric Lee Salazar氏は今までで一番簡単に調整できたと言っています。
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6USAチャンピオンシップにむけて
7月26~27日のUSAチャンピオンシップに向けた調整も同じく加重着衣で行い、バンタム級で優勝し、IFBBプロカードも獲得しています。
出典:WEIGHTOLOGY The Use of Weighted Apparel During Contest Prep: The Science and Practical Application
コンテスト間近の約3週間は、摂取カロリーを1650kcal程度まで下げましたが、この時もまた、通常の減量時より高いカロリー摂取量でした。
(日本でいう全国大会ですから、より厳しい仕上がりを目指したと思われます。)
しかも、コンテストがある週にカロリー摂取量を増やす事ができています。これにより、減量が起因となる浮腫を防ぐ事ができたと言っています。
以上がEric Lee Salazar氏の実例です。
※万人に同じような結果得られる保証はありません。
この方法のメリット
コンテスト調整でこの減量法を活用する事で、以下のメリットが得られます。
代謝適応を減らせる
減量で生じる代謝適応(代謝を落とす)を減らす事ができる。これにより、減量中の停滞が起きにくく、カロリーを段階的に減らす必要性が減る。
比較的高カロリーで減量できる
比較的高カロリーのままで減量を進める事ができる。これにより、トレ時の重量・反復回数の維持(又は向上)がしやすいので筋量維持に優位。
食欲の抑制
減量中の食欲を比較的抑える事ができる。
下肢筋肉の維持
自体重より重い体重で日常生活を過ごすので、下肢筋肉の筋量・筋力の維持に役立つ。
有酸素性運動の実施量が減らせる
有酸素性運動が不要又は実施量を減らす事ができる。これにより、筋トレ効果の阻害を防止できる(有酸素性運動は筋トレ効果を阻害する)。また、コンテスト調整中の疲労低減につながる。
不快な症状を軽減
コンテスト調整中に経験する『頭がボーっとする感』『極度の疲労感』『空腹感』といった不快な症状が軽減できる。
減量が起因の浮腫を抑制
減量時停滞の打開策として利用可
加重着衣が減量に有効な理由(科学的背景)
James Krieger氏の記事によると、加重着衣が減量に有効な理由は以下になります。
1日の総エネルギー消費量が維持・増量できる
体重が減るとエネルギー消費量も減ります。
生活活動によりエネルギーが消費されるわけですが、物を運ぶ場合を思い出して下さい。その物が軽いほど運ぶ労力は少なくて済みます。
生活活動は『自分という物を運ぶ』を数多く繰り返すわけですから、体重が減ると生活活動のエネルギー消費は当然落ちます。
また、基礎代謝量も体重が減ると落ちます。
基礎代謝量は生命活動を維持するための必要最小限のエネルギー量ですが、体重に比例するので体重が減ると基礎代謝量も落ちてしまいます。
ですので、減量すると知らぬ間に1日の総エネルギー消費量が減ってしまうんです。
体重の減り幅が小さくなって、減った分のエネルギー消費量を補おうと有酸素性運動を追加する(又はその実施時間を増やす)といった運動量を増やす対処法をとるわけですが、これは筋肉的に(ボディメイク的に)良くないです。
理由はMethenitisさんのレビューの通り、有酸素性運動は筋トレの効果を阻害する可能性があるからです。
また、コンテスト調整中は強いストレス環境下にあり、体脂肪量やエネルギーレベルが低い中で強度の高い筋トレを維持するので、オーバートレーニングや有害なホルモン変化がおきる可能性があります。
こういったマイナス面を考えると、減った分のエネルギー消費量を運動量の増加で補おうとすることは、得策ではありません。
加重着衣で減った分の体重(又はそれ以上)を補って日常生活を過ごし、エネルギー消費量を維持(又は増加)させる方が体にとっては負担が少なく(=低強度)、上記のマイナス面が解消できますので良い方法といえます。
ちなみにですが、減った分のエネルギー消費量に応じて運動量を増やすのでは無く、食事量を更に減らす対処も一般的です。対処法としてアリですが、それを主にした対処も得策とはいえません。
次項で書きますが、これは基礎代謝量の更なる低下と空腹感の増大を助長してしまうからです。『減量停滞→更に摂取カロリー減らす』を繰り返す負のループにハマってしまい、体調不良、極度の疲労に至ってしまいますし、筋量維持の面においても良い事ではありません。
有利な減量『しっかり食べて、それ以上動く』を有酸素性運動なしでできる
ご存知のとおり、減量・体脂肪減少に必須なのは、エネルギー収支を赤字にする事です。
例えば500kcalの赤字を作ろうとしているAさんとBさんがいて、以下のように計画しました。
Aさん
1日1500kcal摂取と2000kcal消費の組み合わせ。
=低エネルギー摂取+低エネルギー消費
=『食事減らしてきゃいいじゃん派』
Bさん
1日2500kcal摂取と3000kcal消費の組み合わせ。
=高エネルギー摂取+高エネルギー消費
=『しっかり食って、それ以上に動く派』
どちらも同じ500kcal赤字に変わりありません。どちらの計画が効果的なのでしょうか?それは、Bさんに軍配があがります。理由は以下の2つです。
基礎代謝量低下の抑制
体重減少と共に起こる基礎代謝量の低下を抑制できる。
空腹感の低減
というように、エネルギー収支の赤字が同じであっても、『高エネルギー摂取+高エネルギー消費』でエネルギー収支を赤字にして減量を進める方が有利なんです。
これをコンテストの減量に適用しようとすると、多くの方が『食事量を増やして有酸素性運動を多量に増やす』ということを行うと思います。
ですが、前項でも記したとおり、有酸素性運動は筋トレ効果を阻害しますし(Methenitis氏のレビュー)、エネルギー収支赤字の状態で運動量が多量になるのでオーバートレーニングのリスクが増します。
ですので、『高エネルギー摂取+高エネルギー消費』でエネルギー収支を赤字にする減量が有利だからといって、有酸素性運動を増量する事が得策であるとは言えないんです。
では、どうすれば良いのか?
それは、加重着衣の増量によって高エネルギー消費を実現する事です。
加重着衣の導入によって、有酸素性運動を追加・増量する事なく日々の生活活動のエネルギー消費を増やしていくので、体の負担が比較的小さい状態(低強度)で高エネルギー消費が実現できます。
『高エネルギー摂取+高エネルギー消費』でエネルギー収支を赤字にする減量法にとって、加重着衣は最適なツールになり得るという事です。
体重恒常性が働く
人体は変化を好まず、環境が変化しても体の状態を一定に保とうとする働きがあります。これを恒常性(ホメオスタシス)といいます。
一例をあげると体温調整です。暑くなれば発汗などで熱を放散しますし、寒ければ筋肉のふるえ等で熱を産生しようとします。
実は、体重調整においても恒常性を持っています。
それは脂肪細胞が分泌するレプチン(ホルモン)の量で体重・脂肪量を調整するシステムです。
体脂肪が増加すると脂肪細胞のレプチン分泌が増大
↓
血中レプチンが中枢神経系(主に視床下部)に作用
↓
満腹中枢を刺激
交感神経系を活性化
↓
食欲低下・エネルギー消費増加
=体脂肪増加を抑制しようとする
体脂肪が減ると上記とは逆に、脂肪細胞のレプチン分泌量が低下→食欲増加・エネルギー消費低下(=体脂肪を増やそうとする)となります。
最近、このレプチンによる体重恒常性とは別に、他の体重恒常性がある可能性が出てきています。
Jansson氏他18名の研究で、重りを埋め込んだ齧歯類(ラットやマウス)は、コントロール群と比較して体脂肪が自然と減少していく事が確認されました。
これはエネルギー消費の増加では無く、食欲が低下して食事量が減ったために起きてます。
しかも、レプチン量がコントロール群と比較して有意に減少していましたが(という事は、食欲が増す傾向になるはず)、それにも関わらず重り埋め込み群の食欲は低下しています。
この事から、レプチンに関係なく負荷(体重)を検知して食欲を調整する恒常性が存在する可能性があります。どうやら、骨細胞が負荷を感知して脳に働きかけているようです。
この恒常性は人では未確認ですが、仮にあるとするなら、加重着衣の使用はコンテス減量中に起こる食欲増加の抑制に役立つツールだと言えます。
しかし、上述したとおり骨細胞が負荷を感知しているようなので、加重着衣を装着していても日常生活で長時間座っていては、骨への負荷が不十分となり効果が期待できないと思われます。
以上、長々と書いてきましたが、加重着衣にはコンテストの減量を効率化できる可能性があると思っています。
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