昔、腰部や脊柱起立筋だけでなく背中の厚み(上背部筋群の発達)を得ようと、デッドリフトをやり込んだ時期がありました。
高重量を引っこ抜ければ、自然と背中の厚みが得られると思い取り組んでいました。その結果、扱う重量がかなり伸びて背中も発達しましたが、その発達の程度は期待外れでした。
デッドリフトは名称のとおり辛いです。視界に流れ星みたいなものが現れたり、一瞬立ちくらみの様に意識がとびそうになる事もありますね(笑)。
なのに発達具合がいまいち。。。そもそも、背トレにデッドリフトを採用した理由が『Big3種目だから 』『○○選手がやってるから』といった非常に短絡的なものでした。
今ふり返ると、背中にバーベル負荷を乗せるということを理解していなかったので、いまいちな成果というのは当たり前です。
本日は、背中の厚み(上背部筋群の発達)を得るために行う『スナッチグリップ・デッドリフト 』の行い方や意識すべき点を説明します。
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上背部とはどこの部分?
ここで言う『上背部』とはどの部分か、先に示しておきます。下の緑部です。↓

具体的に筋肉名で言いますと、主なものは以下になります。
僧帽筋(そうぼうきん)
棘下筋(きょくかきん)
小円筋 (しょうえんきん)
大円筋(だいえんきん)
三角筋後部(さんかくきんこうぶ)
菱形筋(りょうけいきん)

これらの内、今回のデッドリフトでは僧帽筋への刺激を特に重視しています。
デッドリフトと上背部の関わり
上背部の筋肉が力発揮しながら伸び縮みする事で、デッドリフトの動きになるわけではありません。上背部の筋群は、デッドリフトの主動筋ではないという事です。
ですが、デッドリフト中の上背部筋群の役割を考えると、筋肥大しうる良い刺激になる事がわかります。その役割とは、『肩甲骨のアライメント(肩甲胸郭関節)』と『肩関節(肩甲上腕関節)』の安定を保つ事です。
僧帽筋や菱形筋などが力発揮しているので、バーベルに引っ張られて肩甲骨が剥がれたりしないし、三角筋後部、棘下筋、大円/小円筋などが力発揮しているから、バーベルに引っ張られて肩が抜けたりしないわけです。
このように、上背部の筋肉はデッドリフト中に強く引っ張られ、それに抗って耐えています(=等尺性収縮:アイソメトリック収縮)。
ですので、デッドリフト動作中の上背部には強い張力・緊張(メカニカルテンション)が発生し、多くの筋線維が動員されます。
また、引きの初動ではブレーキ筋として働く側面もあるので、筋損傷しうる強い伸張刺激も得ることができます(=伸張性収縮:エキセントリック収縮)。
さらに、上述のとおりデッドリフト中の上背部はアイソメトリック収縮(等尺性収縮)とエキセントリック収縮(伸張性収縮)が主で、コンセントリック収縮(短縮性収縮)はほぼ無いので(あってもその可動域は狭い)、ベントロウなどの使用重量より高重量が扱えます。
纏めますと、デッドリフトは高重量のバーベルを使って上背部に強い張力・緊張を発生させると共に、筋損傷しうる伸張刺激も与えることができる種目という事です。
これらの刺激は筋肥大反応を促してくれます。
今回紹介するデッドリフトを行う際に、ただ漠然と引き上げ・下ろすのではなく、上記の上背部の関わりや役割を意識して行うと、バーベル負荷がズシリと背中に乗るデッドリフトができます。
この様なデッドリフトを行う事で、腰部・脊柱起立筋だけでなく上背部筋群の発達も得られ、厚みのある背中を獲得する事ができます。
ダンベル・外旋リバースYレイズ⇒スナッチグリップ・デッドリフト
今回紹介するデッドリフトは『スナッチグリップ・デッドリフト』です。
このデッドリフトで上背部の筋群をより動員・刺激するために、アクチベーション種目『ダンベル・外旋リバースYレイズ』→メイン種目『スナッチグリップ・デッドリフト』の順で連続で行います。

これを1セットと定義します。
アクチベーション種目:ダンベル・外旋リバースYレイズ

メイン種目の直前にこの種目を行う目的は、メイン種目で上背部の筋活動を増加させるためです。
注意点は『限界まで反復しない』『追い込まない』ことです。軽負荷で行い、対象筋が意識できる程度(パンプ感がある程度)で終了します。
Júnior氏らの研究によると、軽重量・余力残す事前種目によってメイン種目の筋活動が増加する可能性があります。
(Augustsson氏らの研究によると、疲労するまで行った場合はメイン種目で筋活動が低下するようです。)
メイン種目:スナッチグリップ・デッドリフト

出典:bruno082985チャンネル Snatch Grip Rack Pulls
このデッドリフトはPiper氏とWaller氏のレビューによると、他のデッドリフトと比較して肩甲骨を安定させる肩甲帯の筋群を強化できるので、上背部を刺激するデッドリフトに適しています。
このデッドリフトの開始位置は、腰・背の丸まり防止と高重量の使用を狙うため、スネの中間位あたりにします。
この高さから引けるようにパワーラック等でバーベルの高さを調整します。上背部にバーベル負荷がしっかり乗るのであれば、膝下あたりから引けるように調整しても構いません。
そして、このデッドリフト中の肩甲骨は努めて寄せる動作はしません。バーベルを引き上げた直立位以外、腰・背中が丸まらない範囲であえて肩甲骨を広げて行います。

出典:FitWorldExposedチャンネル How To Snatch Grip Deadlift For A Thick & Wide Back
こうする事で、僧帽筋や菱形筋などが伸びた位置で強いテンションをかける事ができます。
筋肉が伸びた位置で強いテンションがかかると、mTORシグナル伝達経路が活性化したり、筋肥大の成長因子IGF-1(インスリン様成長因子)の(自己)分泌が促進されます。
また、引きの初動でブレーキ筋として働くので、筋肥大要因『筋損傷』が得やすくなると考えられます。
このデッドリフトは、グリップ幅が広いので通常のデッドリフトより強い握力を必要とします。上背部を鍛える事を目的に行うので、迷わずリフティング用ストラップを使用し握力負担を低減させて下さい。
※2025.4.3追記
シングルループのストラップを使うようになりました。最近はEliteFTS製を使用しています。
ダンベル・外旋リバースYレイズの行い方

- ベンチを30°程度インクラインに設定し、両腕を垂らし、両手の平を向かい合わせてうつ伏せになる。
- 肩甲骨の寄せと両腕の外回しを行ないながら、両腕を逆Y字に挙げる。
- 挙げたポジションで2秒程度保持して元に戻す。保持中は上背部筋群(僧帽筋、三角筋後部など)のギュッとした収縮を感じとる。
- 軽負荷で上背部筋群が熱くなる(パンプ感)まで反復するが、疲労困憊までは反復しない。
スナッチグリップ・デッドリフトの行い方
参考動画です。↓
出典:bruno082985チャンネル Snatch Grip Rack Pulls
実施時のポイントは以下です。
セッティング・グリップ幅
- パワーラック等で開始位置(=バーベル位置)をスネ中間位又は膝下に設定する。
- グリップ幅の目安は、片方の腕を横に伸ばし、その腕の握りこぶしから反対側の肩までの距離(Piper氏とWaller氏のレビュー)。可能ならそれより広くてもよい。
引き
- 引き始めの肩甲骨は腰・背中が丸まらない範囲で広げて、バーベルが浮かない程度にまずは引き、上背部筋群にグッとテンションをかける。(引き始めに上背部に負荷を乗せとく)
- 上背部筋群にテンションがかかったら、広げた肩甲骨を維持したまま力強くバーベルを引き上げる。(上背部筋群の緊張を意識する)


出典:FitWorldExposedチャンネル How To Snatch Grip Deadlift For A Thick & Wide Back
バーベルが静止から上がり始めた瞬間、肩甲骨や肩関節が引き剥がれない様に上背部筋群がブレーキ筋として働くので、筋損傷しうる伸張刺激が得られます。以後、上背部はアイソメトリック収縮でバーベル負荷の引っ張りに抗う(強い緊張が維持される)。
直立ポジション
引ききった直立位置では僧帽筋中・下部などのテンションが抜けるので、肩甲骨を少し寄せて収縮させる。

出典:bruno082985チャンネル Snatch Grip Rack Pulls
出典:FitWorldExposedチャンネル How To Snatch Grip Deadlift For A Thick & Wide Back
下ろす
下ろす際は腰・背中が丸まらないよう気を付けながら、肩甲骨を広げて上背部筋群にバーベル負荷をのせながら下ろす。(上背部筋群の緊張を意識する)

出典:bruno082985チャンネル Snatch Grip Rack Pulls
出典:FitWorldExposedチャンネル How To Snatch Grip Deadlift For A Thick & Wide Back
1回1回ラックにバーベルを置き、開始姿勢や引き始めのテンションを入れなおして反復します。けっこう難しく怪我のリスクもあるデッドリフトなので、最初は高重量で行わずに余力ある重量から開始して下さい。
動作に慣れ、しっかり上背部に負荷を乗せて高重量が扱える様になれば、厚く逞しい背中が得られると思います!
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