【23章】アスリートを対象にしたレジスタンストレーニング

 

1.プログラムデザインにおける諸要素

『過負荷の原理』と『特異性の原理』を体系的かつ適切に適用する事で、顕著な効果が得られる。

 

(1)過負荷の原理

  • トレーニングを行う際、ある一定以上の負荷(不慣れな負荷)で行わないと効果が得られないという原理。
  • 毎回同じようなトレーニング負荷で行い続けると、人の適応能力で慣れてしまいトレーニング効果が薄くなる。

 

(2)特異性の原理

  • トレーニング動作が実際のスポーツ動作に近い程、そのスポーツ動作にトレーニングの効果が反映される可能性が高まる。
  • スポーツの各主要スキルの動作パターンを模擬するエクササイズを、少なくとも1種類は含めるべき。
  • 高い速度で力を発揮する能力(バリスティック能力)を高める為には、パワーエクササイズを中負荷で爆発的に実施するべき。(プライオメトリクスエクササイズも効果的)

 

代表的なパワーエクササイズ

 

【パワークリーン】

出典:CrossFit® The Power Clean

 

【クリーン&ジャーク】

出典:Oleksiy TOROKHTIY CLEAN & JERK / Olympic weightlifting

 

【スナッチ】

出典:Oleksiy TOROKHTIY Snatch / Olympic weightlifting

 

【ジャーク】

出典:CrossFit® The Push Jerk

 

【スプリットジャーク】

出典:CrossFit® The split Jerk

 

【プッシュプレス】

出典:CrossFit® The Push Press

 

※ジャークとプッシュプレスの違い

ジャーク

  • 下半身のパワーがメインでバーベルを上方に放り上げる。
  • 股関節、膝関節を曲げて身体を落とし、肘関節を伸ばした状態でキャッチ。
  • 下半身のパワー重視・上半身はバーベル保持なのでプッシュプレスより高重量が扱える。

 

プッシュプレス

  • 初動は下半身のパワーで上げて、後半は上肢の力で上げる。
  • 股関節・膝関節・肘関節を伸ばしたままキャッチ。
  • 比較的上半身・上肢重視なのでジャークより使用重量は下がる。

 

 

2.レジスタンストレーニングのピリオダイゼーション

(1)ピリオダイゼーション

  • トレーニングプログラムを期分けすること。
  • トレーニングプログラムに計画的な変化を与える為の体系的な方法。トレーニング量、強度を適切に操作したり、種目を効果的に選択する事で実施される。
  • また、オーバートレーニングの危険性を減らす事ができる。

 

(2)周期と段階

①マクロサイクル

通常1年間の全トレーニング期間を指す。年間計画。

②メゾサイクル

数週間から数ヶ月単位のトレーニング計画。

③ミクロサイクル

1~4週間のトレーニング計画。日ごと、あるいは週ごとに変化が加えられる。

 

 

(3)メゾサイクルの分類

主な目的、目標、重点を設定し、メゾサイクルを下記のように設定する。

 

筋肥大期・筋持久力期(一般準備期):オフシーズン
  • 後に続く高強度トレーニングの為に、筋系や代謝系の基礎づくり(筋肥大、筋持久力、エネルギー系の持久力向上)。
  • 特異的な種目、非特異的な種目の両方を含む。
  • 強度は低く、量は多く設定する。
  • 70%1RM前後の負荷で8~12レップス。
  • 3~6セット。

 

筋力期(一般準備期):オフシーズン
  • 筋力を高める事が目的。
  • 特異的な種目に絞る。
  • 強度、量ともに中程度。
  • 85%1RM前後で5~6レップス。
  • 3~5セット。

 

筋力・パワー期(一般準備期):プレシーズン
  • スピード、パワーを高める事が目的。
  • 特異的な筋力/パワーエクササイズを少量かつ高強度で行なう。
  • 90~93%1RMで3~4レップス。
  • 3~5セット。

 

ピーキングまたは維持期(試合期):インシーズン

ピーキング

  • 最大の筋力やパワー発揮を目的とする。
  • 特異的な種目を極めて高強度かつ少量で行なう。
  • 93%1RM以上で1~3レップス。
  • 1~3セット。
  • 期間は2~3週間として、他の期よりも短い。

維持期

  • ピーキングで仕上げたパフォーマンスを維持する。
  • 特異的な種目を中強度かつ中程度な量で行なう。
  • 80~85%1RM程度で6~8レップス程度。
  • 2~3セット程度。

 

積極的または消極的休養期(移行期):ポストシーズン

積極的休養期

  • 競技と無関係な身体活動で、生理的・心理的な回復を図ることが目的。
  • 低強度かつ少量で実施する。
  • 期間は1~3週間とし、他の期より短い。

消極的休養期

  • 怪我の治療時。
  • トレーニングしない。

 

 

試合に向けて強度は上がり、量は下がる。

 

 

※代謝系トレーニング

上図の代謝系トレーニングとはエネルギー系の持久力トレーニングのこと。

一般準備期当初はLSD(長い距離をゆっくり走る)で有酸素性の持久能力を高め、試合期に向けてインターバルトレーニングで無酸素性の持久能力を向上させていく。

 

(4)エクササイズの選択とバリエーション

  • 同じ筋群のトレーニングでも、エクササイズに変化を持たせた方がより効果的である。
  • 特定のコアエクササイズはプログラムを通して設定される必要がある。

 

※コアエクササイズ

多関節エクササイズであり、大筋群を動員するエクササイズのこと。世間でよく言う『コア(体幹)エクササイズ』ではない。

 

 

2.レジスタンストレーニングのピリオダイゼーションにおける線形・非線形モデル

(1)線形モデル

  • 強度が徐々に継続的に増加し、量は徐々に継続的に減少させる。
  • 週内で、強度で負荷を変化させる場合、レップ数・セット数(量)は変化させない。

 

(2)非線形モデル

1週間の中で、強度と量を変化させる。

 

練習問題に挑戦!

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