1.プライオメトリックエクササイズ / スピードエクササイズとは
(1)プライオメトリックエクササイズ
- 伸張-短縮サイクル(後で説明)を含めて、予備伸張(※)や反動動作を伴った素早くパワフルな運動。(瞬発力、調整力)
- 伸張反射の利用や、筋及び腱部の弾性要素(伸びた状態から元に戻そうとする力)が利用される。
※予備伸張
あらかじめ筋を引き伸ばす事。
(例)アンクルホップ
<0:00~0:06>
出典:UNHStrengthチャンネル Ankle Hop Series
(2)スピードエクササイズ
- スピード能力向上のために行なう走る運動。
- 上り坂や下り坂を走るトレーニングがよく行われる。
(例)ハイスピード・トーイング
出典:DeepSnapチャンネル OVERSPEED CABLE SPRINTS - SPEED TRAINING - BUNGEE
2.プライオメトリックトレーニングの力学と生理学
(1)伸張-短縮サイクル(SSC)
ストレッチ・ショートニングサイクル(Stretch-Shortening Cycle;:SSC)ともいう。
SSCは以下3つの局面に分けられる。
①エキセントリック局面
②償却局面
③コンセントリック局面
『垂直跳び』を例に説明する。
出典:Rami Samiチャンネル Vertical Jump Test - University of Miami
参考ゴルジ腱器官(腱紡錘)
腱にかかる張力を検知する固有受容器。大きな張力を感じると、運動神経を抑制させ、筋肉をゆるまし、筋出力の抑制を引き起こす。
⇓
出典:Rami Samiチャンネル Vertical Jump Test - University of Miami
⇓
出典:Rami Samiチャンネル Vertical Jump Test - University of Miami
(2)主なエネルギー供給源
プライオメトリクスで主に利用されるエネルギー供給機構は、ホスファゲン機構である。
2.プライオメトリックトレーニングを用いるタイミング
(1)プライオメトリックトレーニングとスポーツパフォーマンス
- 筋パワー(※)を高める事が目標ならば、プライオメトリックトレーニングは理想的な運動様式である。(筋持久力の向上には不向き)
- 減速と加速、方向転換、ジャンプ力といったパフォーマンス向上が可能。
- そのスポーツ動作の特異性にあったプライオメトリックエクササイズを選択するのがよい。(そのスポーツ動作に似たプライオメトリックエクササイズを選ぶ)
※筋パワー
筋肉が素早い動きの中でどれだけ強い力を発揮する能力があるかを表すもの。
筋パワー=筋力×速度
(2)プライオメトリックトレーニングと傷害予防
- プライオメトリックトレーニング自体は身体に与えるストレスが大きい。
- 適切にプログラムされれば、アスリートにおける傷害の発生率が減少する可能性がある。
- プライオメトリックトレーニングが適切では無いクライアント(例:高齢の一般人)の傷害予防としては、エキセントリックトレーニングが良い。
(3)プライオメトリックトレーニングが禁忌となる人々
①年齢
- 思春期前の子供は、骨端線(※)がまだ閉じていなく傷める可能性があるため、高強度の下半身の種目は禁忌。(注意が必要)
- 高齢者は、骨密度は低下している可能性があるので、高強度の下半身の種目は禁忌。(注意が必要)
※骨端線
発育期の骨には、骨の端に成長軟骨と呼ばれる成長をつかさどる軟骨層がある。X線写真では、この部分が細い隙間として見え、骨端線と呼ばれる。
出典:まる接骨院webサイト 腓骨遠位端部 骨端線離解
②経験と現在のトレーニングレベル
- 高い筋力と筋の調節能力(コーディネーション)が必要。
- 基本的なエクササイズを含めたレジスタンストレーニングプログラムを積極的に行う必要がある。
3.プライオメトリックトレーニングのプログラムデザイン
(1)ニーズ分析
ニーズ分析の要素は下記のとおり。
年齢
→若過ぎor高齢者ではないか?
トレーンング経験と現在のトレーニングレベル
→未経験だったりトレーニングレベルが低かったら、基礎的なレジスタンストレーニングを積極的(優先的)に行なう。
傷害歴
体力テストの結果
→体重当たりの筋力や下半身の種目であれば垂直跳びの記録が必要。
トレーニング目標
クライアントの職業や選択した活動で傷害の生じる危険性
(2)様式
①下半身のプライオメトリックトレーニング
- できる限り短時間に、より大きな力を発揮する能力を高め、より高く跳ぶ能力を改善する。
②上半身のプライオメトリックトレーニング
- 上半身のパワー(素早い動きの中で強い力を発揮する)を高いレベルに向上させる。
- 肩甲上腕関節(※)のプライオメトリックトレーニングは、肩と肘の障害を予防する事にもつながる。
※肩甲上腕関節
肩甲骨と上腕骨から成る関節。
(3)強度
- 強度は、開始時点では低いレベルに維持するべき。
- フォームが崩れない程度の負荷を与える。
※上記種目は後程でてきます。
(4)回復
セット間の回復時間は、適切な運動-休息比 1:10~1:5 で設定する。
4.安全面への配慮
(1)トレーニング前の評価
①着地姿勢
主に上に跳ぶ様な種目の着地中、肩は膝の上、つま先の上に膝がくるようにしながら、足関節、膝関節、股関節が屈曲する事が必要。
膝を内反や外反しないこと。
出典:Rami Samiチャンネル Vertical Jump Test - University of Miami
出典:Fitness Cultureチャンネル Plyometric Training Progression | Go From Beginner to Advanced
②筋力
※クラッププッシュアップ
出典:Testosterone Nationチャンネル Clap Push-Ups
③スピード
④バランス
一定時間にわたって、その姿勢を維持する能力が必要。
⑤開始年齢
- 14歳以下、60歳以上の場合は注意が必要。(低強度ならOK)
- 身体的な成熟条件のみならず、心理的な成熟に対しても考慮する事が重要。
(2)トレーニング機器と施設
①着地するサーフェス(床面)
衝撃吸収性の高いものが必要。しかし、柔らか過ぎるものも不適切。
推奨
芝生、吊り床(※)、ラバーマット
硬すぎ
コンクリート、タイル、硬い鋼材
柔らかすぎ
15cm以上厚さのマット、ミニトランポリン
※吊り床
建物の床を上部より吊った形式で、サスペンション構造の1つである。ダンススタジオ等。
②適切なシューズ
左右の安定性があって、幅広の滑らないソール。軟らかすぎるのは不可。
ランニングシューズは左右の安定性が比較的ないので不向き。
プライオメトリクス種目概要
代表的なプライオメトリクス種目を紹介します。
(1)下肢のプライオメトリクス
アンクル・ホップ(強度:低)
<0:00~0:06>
出典:UNHStrengthチャンネル Ankle Hop Series
目的
下腿と足関節の爆発的反応筋力の強化
動作概要
足首のバネを使って、できるだけ高く連続ジャンプする。
ポイント
- 膝を深く曲げ過ぎない。
- 足首の筋肉の収縮というよりも、足首の腱の弾性によって跳ねる感覚で跳ぶ。(足首を固定して腱のバネで跳ぶ感覚。)
- 踵はできるだけ接地せず、できるだけ短い接地時間で、できるだけ高く跳ぶ。
ニー・タック・ジャンプ(強度:中)
出典:kbandstrainingチャンネル Jump Higher With Tuck Jumps - Drill 1013
目的
素早い股関節の屈曲と着地後の切り返しの強化
動作概要
- 股関節、膝、足首と腕の反動を使って高く跳び、膝を曲げて胸の高さまで引き上げる。
- 膝を伸ばして着地したら直ぐにジャンプする。
- これを繰り返す。
ポイント
常に背すじを伸ばし、膝を抱え込む時に上体を前屈させない(上体が迎えに行ってはダメ)。
スクワット・ジャンプ(強度:中)
出典:Ian Lauerチャンネル The Plyo Series: Jump Squat
目的
深くしゃがんだ姿勢からの爆発的ジャンプ能力の改善
動作概要
- 大腿部が地面と平行になるくらいまでしゃがみ、できるだけ高くジャンプする。
- 着地と同時に再び大腿部が地面と平行になるくらいまでしゃがんでジャンプを繰り返す。
ポイント
- 背すじを常に伸ばしておく。
- 下を見ず、視線をまっすぐか少し上に向ける。
バット・キック・ジャンプ(強度:中)
出典:Ezia Coachチャンネル Butt Kick Jump
目的
膝から下の素早い引き付けと接地時の切り返しの強化
動作概要
- 高く跳んで膝を曲げ、踵を臀部に付ける。
- 膝を伸ばして着地し、ジャンプを繰り返す。
ポイント
- 膝を曲げる時に股関節はできるだけ曲げない。
- 勢いよく踵で臀部を叩くように行なう。
スプリット・ジャンプ(強度:中)
※もう少し素早い切り返しとジャンプ中の両脚揃えが理想です。
出典:Hockey-Workout.com Off-Season Trainingチャンネル Plyometrics #1 Split Squat Jump
目的
股関節を前後に開いた姿勢での爆発的筋力強化
動作概要
- 真上にジャンプし、両脚を伸ばして揃える。
- 最初と同じ姿勢になる様に着地し、連続ジャンプする。
- 身体の前に来る脚は常に同じ側。
ポイント
- 前脚の踵をしっかりと地面に付ける。
- 前脚の下腿は地面とほぼ垂直。
- 前脚の爪先は真直ぐ前方に向ける。
- 上体をぶらつかせない様に注意する。
シザーズ・ジャンプ(強度:中)
出典:Muscle and Motionチャンネル Split Jumps I Plyometric Training I Anatomical Analysis
目的
左右交互の前後開脚ジャンプにおける姿勢の安定
動作概要
スプリット・ジャンプと同様にジャンプして、空中で前後の脚を入れ替える。
ポイント
- 脚の入れ替えに合わせて、腕を上手く使う。
- 左右にふらつかないようにする。
- 上体を常に垂直に保つ。
- 爪先を真直ぐ前に向ける。
ダブル・シザーズ・ジャンプ(強度:強)
出典:Dew Spicherチャンネル Double Scissor Jump
目的
空中での素早い脚の入れ換え
動作概要
- 空中でいったん前後の脚を入れ換え、さらにもう一度入れ換えて踏み切りと同じ側の脚を前方に出して着地する。
- 着地後、安定した姿勢を確保し再びジャンプする。
ポイント
- 着地時にふらつかない様にして、できるだけ休まないようにする。
- 崩れた姿勢のまま、無理に連続ジャンプする必要はない。
パイク・ジャンプ(強度:強)
出典:『WATANABEアスリートジャーナル』チャンネル ジャンプ力アップトレーニング 「連続パイクジャンプ」
目的
脚全体の引き上げと着地時の切り返しの強化
動作概要
- できるだけ膝を伸ばしたまま、両脚を前方に引き上げる。
- ジャンプし、両手で爪先をタッチする。
- もとの姿勢で着地し、直ぐにジャンプを繰り返す。
ポイント
- できるだけ膝が曲がらないように股関節から大腿部を引き上げる。
- 背すじが丸くならない様にする。
- 脚を開く角度は、目的に応じて変えるとよい。
片脚タック・ジャンプ(強度:強)
出典:Trackwiredチャンネル Single Leg Tuck Jumps
目的
ジャンプした脚の素早い引き付けと切り返しの強化
動作概要
- ジャンプした方の脚を屈曲し、膝を胸に引き付ける。
- 脚を伸ばして着地し、直ぐ同じ脚で繰り返す。
ポイント
- 上体をできるだけ垂直に保つ。
- 引き上げた脚をできるだけ素早く胸に引き付ける。
- 引き付けた脚を素早く伸展して着地し、素早く切り返して次のジャンプにつなげる。
デプス・ジャンプ(強度:強)
出典:蟹田亮人チャンネル デプスジャンプ(Depth Jump)
目的
ジャンプ能力の向上
動作概要
- 両足を肩幅程度に開き、ボックスの上で直立姿勢をとる。爪先はボックス端に合わせる。
- ボックスから1歩出し、両脚でボックスから降りる。
- 着地後、直ちにできるだけ高く跳びあがる。
ポイント
- 接地時間を最小にする。
- 強度を変えるには、ボックスの高さを増す。30cmの高さからはじめるとよい。
- 同じ場所でジャンプと着地を行なうようにする。
- クライアントの身長や能力以上に高いボックスは使用しない。
他にも、いろいろある。
<スキップ>
出典:MedStar Healthチャンネル Pre-Plyometrics (Metric 3) ACL Exercise: Skipping
<パワースキップ>
出典:MedStar HealthチャンネルPlyometrics (Phase 2) ACL Exercise: Power Skipping
<シングルアーム交互(脚)バウンド>
出典:Sim Alfredチャンネル Plyometrics training - Bounding 2
※腕振り:シングルアーム
左右の腕をランニングのように交互に振る。
<ダブルアーム交互(脚)バウンド>
出典:Hadley Winthropチャンネル BEcorpTraining Alternate Leg Bounds
※腕振り:ダブルアーム
両腕を揃えて強く振る。
<ボックスジャンプ>
出典:TrainingPeaksチャンネル Box Jump
<(片脚)ラテラルプッシュオフ>
出典:TotalFormFitnessチャンネル LATERAL PUSH OFF
※ボックスに近づき過ぎると股関節内転筋群の刺激が弱くなる。
<(交互脚)ラテラルプッシュオフ>
出典:TotalFormFitnessチャンネル LATERAL PUSH OFF (ALTERNATING)
※ボックスに近づき過ぎると股関節内転筋群の刺激が弱くなる。
<ダブルレッグホップ>
出典:Samuel Gardnerチャンネル Double Leg Hops Continuous
※前方への移動スピードを重視する必要はない。
<ボックスバウンド(ボックス トゥ ボックス)>
出典:The Rehab Coach - Jo brunチャンネル Pro Rugby Training. Plyometrics Box to Box. Brent Wilson Btb 60cm
(2)上肢のプライオメトリクス
メディシンボールドロップボール(強度:低)
出典:Melissa Everestチャンネル Medicine Ball Drop
目的
仰向け姿勢での、上半身プッシュ動作におけるパワー発揮の強化
動作概要
- 落ちてきたメディシンボールを胸に素早く引き付ける。
- できるだけ素早く強く押し返す。
ポイント
- 確実にメディシンボールを受け取り、胸にあたらない様に注意する。
- 強度を変えるには、メディシンボールの落下開始高さを変える(高い程強度が増す)、メディシンボールの重さを変える、メディシンボールを落とす速度を変えるとよい。
ウォールプッシュ(強度:低)
出典:Gemi Galipotチャンネル plyometric wall push up
目的
立位姿勢での上半身パワー発揮の強化
動作概要
- 壁から50cm程離れて立ち、両腕を前に出す。
- 壁に向かって倒れ、手の平が壁についたら直ぐに元の位置に戻るぐらい強く押し返す。
- これを連続で行なう。
ポイント
- 肩、腰、膝、足首が常に一直線上にあるよう固定し行なう。
- 壁に手がついたら直ぐに、できる限り強く押し返す。
スーパイン・ダブルアームオーバーヘッドスロー(強度:低~中)
<16:00~16:28>
出典:Aleksey Molchanovチャンネル High Powered Plyometrics Retro Coaching video
目的
仰向け姿勢での上半身プル動作におけるパワー発揮の強化
動作概要
頭を持ち上げ両手を腹部の方へ振り降ろし、メディシンボールを出来るだけ早く投げる。
ポイント
- メディシンボールを持った腕で反動を使わずに素早い動きで投げる。
- その後、反動をつけて行う動作で実施。
- また手の位置へメディシンボールを返してもらい、取ったら直ぐにメディシンボールを投げる様に行なうと、さらに強度が増してくる。
- 強度はメディシンボールの重さを変える事で可能。
- 片手で行なう事もできる。その場合は、両手で行なう場合よりも強度が増すので、肩の痛みを持つ者は注意が必要。
プッシュアップジャンプ(強度:中)
出典:Beachbodyチャンネル How To Do the Plyo Pushup | Beachbody
目的
腕立て姿勢による上半身プッシュ動作のパワー発揮強化
動作概要
- 力強く腕立て動作で身体を持ち上げジャンプする。
- 着地時には肘を少し曲げ手首のストレスを軽減する(曲げ過ぎないこと)。
ポイント
- 体幹部にしっかり力を入れて、肩・肘・手首を出来るだけ速く伸ばす。
- 着地時の衝撃の干渉も正しく行い、特に手首の怪我には十分注意する。
- 1回のジャンプを高くし、より爆発的な上半身プッシュ動作のパワーを発揮する場合と、ジャンプの高さは下がるが連続したパワーを発揮する場合がある。
シットサイドスロー(強度:中)
<21:32~22:20>
動画は立位バージョン。これを座位で行なう。
出典:Aleksey Molchanovチャンネル High Powered Plyometrics Retro Coaching video
目的
スローイング動作を利用した座位姿勢の体幹捻転動作のパワー発揮強化
動作概要
- 横向きに脚を伸ばして座り、補助者は3mくらい離れて立つ。
- 補助者は座っている側のお腹辺りにメディシンボールを投げる。
- 補助者から投げてもらったメディシンボールを受け取ったら、少し身体を捻って出来るだけ強く投げ返す。
- 反対側も行なう(反対側の捻転動作)。
ポイント
背すじを出来るだけ伸ばして早く捻って返す。
ウッドチョッパー(強度:中)
動画はプレートを負荷として行っています。メディシンボールで行なう場合もあります。
出典:株式会社パフォーマンスアカデミーチャンネル 天理大学ラグビー部 produce by 株式会社パフォーマンスアカデミー
目的
反動を利用して行うジャンプ動作、スローイング動作につながる体幹屈曲伸展動作のパワー発揮強化
動作概要
- 足を肩幅より少し広めに位置させて、両手にメディシンボールを持つ。
- メディシンボールを大きく頭上に振り上げる。
- 胸を張り、少し身体を反らした状態から素早くボールを股間あたりまで振り降ろし、これを連続で行なう。
ポイント
- 振り上げ、振り降ろしの切り換えを出来るだけ速く行ない、メディシンボールを速く動かす。
- メディシンボールの軌道も大きくとる(腕を伸ばす)。
- 顔は正面を向いたまま、背中が丸まらない様に注意する。
ニーリング・ダブルアームオーバーヘッドスロー(強度:高)
<41:50~42:12>
出典:Aleksey Molchanovチャンネル High Powered Plyometrics Retro Coaching video
目的
膝つき姿勢における上半身プル動作のパワー発揮強化
動作概要
- 両膝を地面につき、メディシンボールを頭上に構える。
- 大きく腕を後方に引くと共に胸を張り、しっかり反動を使って遠くへ投げる。
ポイント
- 肩に大きなストレスがかかるので、柔軟性をしっかり高めておくこと。
- 投げる瞬間は胸を張って行なう。
- メディシンボールの重量を重くしたり、相手に投げ返してもらい更に強く投げ返す事で、強度を増すことができる。
- 片手で投げる場合もあるが、肩の痛みを過去に起こしたことがある方や今現在に肩の痛みがある方の適用は注意が必要。
※メディシンボールや他負荷を持って回転を伴う種目では、回転半径(負荷を持つ腕の長さ)によって強度を変える事ができる。
回転半径(腕の長さ)が小さい
→強度が低下する。
回転半径(腕の長さ)が大きい
→強度が高まる。
5.スピードトレーニングの力学と生理学
スピード筋力
高速度で大きな力を発揮する能力。
スピード持久力
長時間にわたって、高いスピードを維持するための能力。基本的には6秒よりも長い時間。
6.スピードトレーニングのプログラムデザイン
(1)様式
- スピードトレーニングは、フォーム、ストライド頻度(ピッチの速さ)、ストライド長(歩幅)に焦点が当てられる。
- ストライド頻度とストライド長が増加すると、ランニングスピードは高まる。
(2)ストライド頻度
①ストライド頻度
一定の時間内におけるストライド数のこと。
②ストライド頻度向上のトレーニング
スプリントアシスティッドトレーニング
(例)
下り坂スプリント(傾斜3~7°)
ハイスピード・トーイング(高速の牽引)
(3)ストライド長やスピード筋力
①ストライド長・スピード筋力
ストライド長:
1歩の距離のこと。
スピード筋力:
高速度で大きな力を発揮する能力。
②ストライド長・スピード筋力向上のトレーニング
レジスティッドスプリント
(例)
登り坂スプリント
弾性チューブやパラシュートの牽引するランニング
プライオメトリックトレーニング
(4)回復
- スピードトレーニングは、最大努力で行なうために十分な回復が必要。
- 運動-休息比は 1:5 ~10が良い。
(5)漸進性
強度は当然ながら、低→中→強の順で上げていく。
(例)
低:アームスイング
中:バットキック
強:下り坂スプリント
参考SAQトレーニング
素早い動きを身につけるのに適したトレーニング方法。「スピード」をさらに細分化し、3つの点からトレーニングを行う。
7.スピードトレーニングにおける安全性への配慮
(1)トレーニング前の評価
ハムストリングスの柔軟性と筋力が重要視される。
ハムストリングスの筋力
大腿四頭筋の2/3以上の筋力が必要とされる。
(2)サーフェスと着用するシューズ
衝撃吸収性の高いものが必要。しかし、柔らか過ぎるものも不適切。
①サーフェス(床面)
芝生、吊り床、ラバーマットを推奨。
②適切なシューズ
幅広の滑らないソールのものを着用すべき。
スピードトレーニング種目概要
代表的なスピードトレーニングの種目を紹介します。
アームスイング(強度:低)
出典:ZoneReadyチャンネル Linear Speed: Seated Arm Swing
目的
ランニング、スプリント時の腕振りの改善・強化
動作概要
- 肘90°を維持し、リラックスして、スプリント時の様に腕を前後に振る。
- 腕の可動域は、手が鼻の高さから腰の位置まで移動するレンジ。
- 腕振りは力強く行なう。(ハンマーで叩く様に、あるいはパンチする様に)
- 腕が頻繁に自身の正中線を横切ってしまわない様に注意。(腕振りは矢状面で行なう)
バットキック(強度:中)
踵で臀部を叩く様に行なう。
出典:DeepSnapチャンネル BUTT KICKS - SPEED TRAINING WARM UP
目的
ランニングフォームの改善、ハムストリングスの筋収縮速度の強化
動作概要
- 下腿を後方にスイングする事によって踵を臀部の方に引く。
- この時、踵が臀部にバウンドしても構わない。
下り坂スプリント(強度:高)
出典:Matt Barrチャンネル Downhill Sprints - Overspeed Training
目的
スプリントアシスティッドトレーニングの一例で、ストライド頻度の向上
ハイスピード・トーイング(強度:高)
牽引してもらい(チューブや自分より速いもの)、オーバースピードで走る。
出典:DeepSnapチャンネル OVERSPEED CABLE SPRINTS - SPEED TRAINING - BUNGEE
目的
スプリントアシスティッドトレーニングの一例で、ストライド頻度の向上
登り坂スプリント(強度:高)
出典:Simple Speed Coachチャンネル How to Run Faster w/ Incline Sprints | Speed Training
目的
レジスティッドトレーニングの一例で、ストライド長やスピード筋力の向上
チューブやパラシュート牽引走(強度:高)
自分が負荷を牽引して走る。
出典:AthleteEquipチャンネル Parachute - Sprinting Instructional Drills (How to Run Faster and Increase Speed)
目的
レジスティッドトレーニングの一例で、ストライド長やスピード筋力の向上
8.プライオメトリックトレーニングとスピードトレーニングの複合トレーニング
- 一般的には、プライオメトリックトレーニング、スピードトレーニング、レジスタンストレーニングの内、同じ日に同じ部位を実施するのは1つだけとする。(上半身のレジスタンストレーニング&下半身のプライオメトリックトレーニングならばOK)
- 高強度のレジスタンストレーニングの直後に、プライオメトリックトレーニングを行なう方法もある。これをコンプレックス(複合)トレーニング(※)という。
- レジスタンストレーニングの中にプライオメトリックエクササイズの要素を入れたやり方もある。(例:負荷をつけてのスクワットジャンプ)
- 有酸素性トレーニングやレジスタンストレーニングと同じ日に実施しなければならない場合は、それらの前にプライオメトリックトレーニングを実施するとよい。
- 長距離選手がプライオメトリックトレーニングを実施する事で、パフォーマンスが向上する。
※コンプレックス(複合)トレーニング
PAP(Post-Activation Potentiation、活性後増強)の効果を利用してプライオメトリックエクササイズの実施効果を向上させる事が目的で、高負荷レジスタンスエクササイズ実施直後にプライオメトリックエクササイズを行なう。
(例)
高負荷のスクワット直後(PAPにより筋活性している状態)に、ジャンプ動作を行う。これを数セット繰り返す。