1.高血圧
- 高血圧の定義は、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上。
- 血圧の上昇は、心臓発作と脳卒中の危険因子である。腎疾患や血管系疾患を引き起こす。
(1)高血圧のマネジメント
生活習慣の改善
- 充分な睡眠時間
- ナトリウム摂取の削減と充分なカリウム摂取
- 必要であれば減量
- アルコール摂取の制限
- 有酸素性運動の実施
- 飽和脂肪酸とコレステロール摂取の抑制
- 禁煙
β遮断薬服用のクライアント
β遮断薬(ベータブロッカー)を服用しているクライアントは運動強度の上昇に対して心拍数が正常な反応を示さないので、強度設定には心拍数を用いずに主観的運動強度(RPE)を用いる。
(2)高血圧のクライアントのためのエクササイズガイドライン
特に医師からの許可が無い場合(医師の判断をきいていない)には、当日の運動許可基準は運動前の血圧が160/95mmHg未満とする。
有酸素性エクササイズ
【初期】
- 強度:最大酸素摂取量の40~50%やRPE 8~10。
- 実施時間:15~30分。
- 頻度:週3~7回。
↓4~6ヶ月経過
【最終的に】
- 強度:最大酸素摂取量50~85%やRPE 11~13。
- 実施時間:30~60分。
- 頻度:週に3~7回。
注意
- 上記の強度は、目安を数値で表したが、あくまでも有酸素性運動の範囲内で行なう。(LTやVTよりも低い強度の範囲内とする。)
- エクササイズや体力テストの実施中に、心拍数は上昇しながらも収縮期血圧が低下したら、直ちに運動強度を低下させクールダウンを実施する。
※LTとは
乳酸性作業閾値のこと。
血中乳酸濃度が急に上昇する運動強度。無酸素性の運動領域に変わる閾値といえる。
※VTとは
換気性作業閾値のこと。
酸素摂取量に対し二酸化炭素(又は換気量)の上昇が急に起こる運動強度。無酸素性の運動領域に変わる閾値といえる。
レジスタンストレーニング
【初期】
- 強度:50~60%1RM。
- レップ数:16~20レップス。
- セット数:1~3セット。
- セット間休息:2~3分間で完全回復を促す。
- エクササイズ選択:多関節で大筋群を使うエクササイズを選択。
- 実施時間:30~60分。
- 頻度:週2~3回。
↓4~6ヶ月経過
【最終的に】
- 強度:8~12RMの重量。
- レップ数:8~12レップス。
- セット数:1~3セット。
- セット間休息:2~3分間。
- エクササイズ選択:多関節で大筋群を使うエクササイズを選択。
- 実施時間:30~60分。
- 頻度:週2~3回。
注意
- バルサルバ法(呼吸法)は禁忌。
- 血圧が著しく上昇するので等尺性筋活動(アイソメトリクス)は避けるべき。
心筋梗塞、脳卒中と末梢血管疾患
病態生理
心臓、脳、一般の血管系での血流の閉塞状態。
危険因子
- 高血圧
- 高コレステロール血症
- 糖尿病
- 喫煙
- 肥満
- 家族歴
(1)心筋梗塞後クライアントのエクササイズガイドライン及びプログラム
ガイドライン
- 心筋梗塞後のクライアントは、医師の許可を得るまではトレーニングする事ができない。
- 異常な兆候を確認し、観察する事が重要。胸部痛、動悸、息切れ、発汗、吐き気、首痛、腕痛ど。
プログラム
- 有酸素性エクササイズは、最大酸素摂取量の40%やRPE 9~11から開始。15~40分間継続。週3~4回実施。
- レジスタンスエクササイズは、20レップスを1~3セットから開始。週2~3回実施。バルサルバ法(呼吸法)は禁忌。
(2)脳血管疾患後クライアントのエクササイズガイドライン及びプログラム
ガイドライン
神経障害が無く、医師から非監視下でのエクササイズを許可されているクライアントをトレーニングさせる事ができる。
プログラム
- 有酸素性エクササイズはエルゴメーターが推奨され、最高酸素摂取量(ピークVO2)の30%以下から開始する。
- レジスタンストレーニングは障害を受けた四肢の新しい神経経路の発達に役立つ。
- 柔軟性エクササイズの実施は重要で、可動域の維持・改善に有効。
※最大酸素摂取量(VO2Max)
理論的な潜在的最大能力(全ての条件が最高レベルの状態である場合の値)であり、計算値。
※最高酸素摂取量(ピークVO2)
体力レベルや健康状態、モチベーションといった様々な要素に影響を受ける実測値。
(3)末梢血管疾患を持つクライアントのエクササイズガイドライン及びプログラム
ガイドライン
心臓病関連の原因となる可能性がある。
プログラム
有酸素性エクササイズは、歩行時、跛行(はこう。正常な歩行ができない)やふくらはぎ痛がある場合、痛みを感じるまで歩き、感じたら止まる事を繰り返す。
(4)喘息を持つクライアントのエクササイズガイドライン及びプログラム
- 運動強度はRPE 11~13と息切れの状態でモニターするべき。
- 午前中の遅い時間にエクササイズする事が望ましい。
注意
慢性閉塞性肺疾患の患者はパーソナルトレーナーの活動の範囲外である。
※慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは
従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。
出典:一般社団法人 日本呼吸器学会 呼吸器の病気より。