通常のトレーニングでは予めセット数を決めて、それを遂行していきます。
そうでは無く、『反復回数』や『実施時間』を事前に決めてトレーニングを進めていく手法があります。
過去の記事では、反復回数を事前に決めて行うトレーニング手法『総レップ法』を紹介しました。
これは決めた反復回数をレストポーズ法でこなしていくもので、所定の反復回数に到達するまで小休息を挟みながら反復限界を繰り返します。
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【筋トレ】Chad Waterbury式『総レップ法』
本日は、予め決めておく要素を実施時間にしたトレーニング手法『総時間法』を紹介します。
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総時間法について
以下に概要説明、この手法の狙い、具体例を示します。
概要説明
- 『総時間法』は実施時間を予め決めて行うクラスタセット法で、所定時間が経過するまで、小休息を挟みながら一纏まりの反復回数を繰り返し実施する。
- この実施中、使用重量は変えない。
- 一纏まりの反復回数をこなす事が厳しくなってきたら(※RIR 1回)、その都度小休息時間を延長する。
※RIRとは
Reps in Reserveの略で、『反復限界まで残り何回か』を表わす。
例えば、4回(RIR 1回)だと『余力1回を残して4回挙げる(反復限界5回だが4回だけ挙げる)』を意味する。
RIR 1回の判断は自分の感覚で行ないます。その感覚が実際に限界反復の1回手前なのか不安な場合は、事前に試して確認すると良いです。(トレ経験が豊富な方は感覚値と実際値が大体合致します)。
この手法の狙い
- 過度な疲労を抑えながら、筋繊維動員が比較的高い反復(RIR 1~2回)でボリュームを稼ぎ筋肥大を狙う。
ちなみに、過去に紹介した「総レップ法」も筋繊維動員が高い反復でボリュームを稼ぐ手法ですが、限界反復を繰り返すので疲労(中枢性疲労、末梢性疲労)が高くなってしまいます。この疲労面の改善を重視した手法が『総時間法』と言えるかもしれません。
「総レップ法」の様に限界反復を多く繰り返したり、通常セット法でも限界反復のセット数が多いと疲労(中枢性疲労、末梢性疲労)が過度に高まる場合があります。
こうなると、運動神経・筋肉の疲労である末梢性疲労よりも、脳・脊髄の疲労である中枢性疲労の方が厄介だと個人的に思っています。そう思う理由は、末梢性疲労は体を休めれば回復しやすいですが、中枢性疲労は蓄積しやすく、慢性的な倦怠感などを生じさせるからです。
過度な中枢性疲労は他にも、筋肉への神経駆動低下や内分泌系への悪影響(コルチゾール上昇、テストステロン低下など)、回復系や免疫系への悪影響を引き起こします。
筋肥大にとって明らかにマイナスです。
限界反復は筋肉に筋肥大要因を高いレベルで与えうる手段ですが、良かれと思ってやり過ぎると、上記の様な状態に陥ってしまいます。
こうならない様に、過度な疲労に気を配りながら筋肥大刺激を体に与える手法が『総時間法』になります。
私もそうですが、普段から限界反復を基本にしたトレーニングをしている方は、過度に疲労をため込む傾向(特に中枢性疲労)があります。
疲労蓄積の除去や予防を目的に、『総時間法』のような限界反復を行わないトレーニング手法も取り入れると良いと思います。
反復を限界まで行わずにその手前で終える場合でも筋肥大はするし、神経筋疲労の程度は反復限界時より低く抑えることができます。最近の研究(Refalo氏他4名の研究)でも示されています。
具体例
『総時間法』の具体例として、私が取り入れている2パターンを以下に示します。
1.『Muscle Round』をベースにした総時間法
トレーナーである Leo Costa氏のクラスタセット法の1つに『Muscle Round』があります。Scott Stevenson博士開発のFortitude Trainingでも組み込まれています。↓
出典:Scott Stevensonチャンネル DB Incline Scoop Fly Muscle Round
これをベースに組み立てた総時間法です。
使用重量10~12RM固定(反復限界10~12回の重量固定)で、『4回反復して10秒休息』を15分間繰り返します。
当然ですが、使用重量10~12RM固定で15分間全て『4回反復して10秒休息』はできません。
実施途中で4回(RIR 1回)の状態になったら、その都度休息時間を10秒延長して4回(RIR 1~2回)の反復を15分間実施します。↓
一見すると実施時間15分は長いと感じると思います。
そうしている理由は、10~12RM重量固定で4回(RIR 1~2回)の反復をそれ相応のボリュームまで維持しようとすると、休息時間も長くなっていくからです。
慣れないうちは5~7分程度からはじめて、徐々に実施時間を増やして15分で行なえる様にします。
※実施時間の上限
実施時間15分としていますが、その上限はご自身の体力や回復能力に応じて決めて下さい。15分未満でも良いですし、15分以上でも構いません。
この15分実施を1セットと定義し、1セットのみ行います。
【実施時間】
15分。
不慣れなうちは5~7分程度でOK。徐々に15分目指して時間を延長していく。
※実施時間の上限
ご自身の体力や回復能力に応じて決める。15分未満でも良いし、15分以上でも良い。
【反復テンポ】
短縮性筋収縮(押す・引く等):力強く
伸張性筋収縮(下ろす・戻す):等速2秒
上記は私の場合です。ご自身が行っているテンポで構いません。
【使用重量】
上記テンポで10~12RM(反復限界10~12回の重量)。
実施中は重量を変えない。
【一纏めの反復回数】
4回。
実施中に4回(RIR 1回)の状態になったら、その都度小休息時間を10秒延長して4回(RIR 1~2回)の反復を維持する。
【小休息時間】
10秒。
実施中に4回(RIR 1回)の状態になったら、その都度小休息時間を10秒延長していく。
【セット数】
1セットのみ。
【漸進する条件】
- 『4回反復して10秒休息』の実施が反復開始から連続6度できたら、次回トレーニングで使用重量を1~2kg程度増量する。
- 『4回反復して10秒休息』の実施が反復開始から連続6度できていない場合は(反復4回下回り休息時間延長など)、次回トレーニングで同じ使用重量のまま、連続6度の『4回反復して10秒休息』の完遂を目指す。
漸進条件を満足する例
①余裕でクリアな場合
全ての4回反復がRIR2回以上で条件を満足する。
②ギリでクリアな場合
6度目の4回反復で初めてRIR1回となって条件を満足する。
漸進条件が不満足な例
①全然ダメな場合
途中で4回反復を下回る。
②惜しいけどダメな場合
4回反復を連続6度実施するも、途中でRIR1回となって休息時間が20秒以上になってしまった。
2.『Myo rep法』をベースにした総時間法
トレーナーである Borge Fagerly氏のクラスタセット法に『Myo Rep法』があります。↓
出典:Gaintrust Bodybuildingチャンネル Myo Rep Match Incline Cable Fly
これをベースに組み立てた総時間法です。
使用重量14RM固定(反復限界14回の重量固定)で、最初に『12回反復して15秒休息』を実施し、そこから『5回反復して15秒休息』を繰り返します。実施時間は、最初の『12回反復して15秒休息』も含めて15分です。
当然ですが、使用重量14RM固定で15分経過するまで『5回反復して15秒休息』を繰り返すことはできません。
実施途中で5回(RIR 1回)の状態になったら、その都度休息時間を10秒延長して5回(RIR 1~2回)の反復を15分経過するまで繰り返します。↓
一見すると実施時間15分は長いと感じると思います。
そうしている理由は、最初に12回反復し、その後14RM重量固定のまま5回反復(RIR 1~2回)をそれ相応のボリュームまで維持しようとすると、休息時間も長くなっていくからです。
慣れないうちは5~7分程度からはじめて、徐々に実施時間を増やして15分で行なえる様にします。
※実施時間の上限
実施時間15分としていますが、その上限はご自身の体力や回復能力に応じて決めて下さい。15分未満でも良いですし、15分以上でも構いません。
この15分実施を1セットと定義し、1セットのみ行います。
【実施時間】
15分。
不慣れなうちは5~7分程度でOK。徐々に15分目指して時間を延長していく。
※実施時間の上限
ご自身の体力や回復能力に応じて決める。15分未満でも良いし、15分以上でも良い。
【反復テンポ】
短縮性筋収縮(押す・引く等):力強く
伸張性筋収縮(下ろす・戻す):等速2秒
上記は私の場合です。ご自身が行っているテンポで構いません。
【使用重量】
上記テンポで14RM(反復限界14回の重量)。
実施中は重量を変えない。
【一纏めの反復回数】
最初に12回実施し、その後は5回を繰り返す。
繰返し中に5回(RIR 1回)の状態になったら、その都度小休息時間を10秒延長して5回(RIR 1~2回)の反復を維持する。
【小休息時間】
15秒。
繰り返し中に5回(RIR 1回)の状態になったら、その都度小休息時間を10秒延長していく。
【セット数】
1セットのみ。
【漸進する条件】
- 『5回反復して15秒休息』の繰返しが開始から連続5度できたら、次回トレーニングで使用重量を1~2kg程度増量する。
- 『5回反復して15秒休息』の繰返しが開始から連続5度できていない場合は(反復5回下回り息時間延長など)、次回トレーニングで同じ使用重量のまま、連続5度の『5回反復して15秒休息』の繰返しを目指す。
漸進条件を満足する例
①余裕でクリアな場合
全ての5回反復がRIR2回以上で条件を満足する。
②ギリでクリアな場合
5度目の5回反復で初めてRIR1回となって条件を満足する。
漸進条件が不満足な例
①全然ダメな場合
途中で5回反復を下回る。
②惜しいけどダメな場合
5回反復を連続5度実施するも、途中でRIR1回となって休息時間が25秒以上になってしまった。
採用する種目について
安全面の観点から、総時間法はスクワット、デッドリフトに適用しない方が良いと思います。
そして、総時間法の狙いである『過度な疲労を抑えながら、筋繊維動員が比較的高い反復を十分に繰り返す』を実現するには、コンパウンド種目(多関節種目)よりアイソレーション種目(単関節種目)で総時間法を行なう方が良いかもしれません。
『過度な疲労を抑えながら、筋繊維動員が比較的高い反復を十分に繰り返す』に関して、総時間法とコンパウンド種目(多関節種目)の組み合わせが、適していないかもしれないと思う理由は以下の2つです。
中枢性疲労の増大
協働筋活動の増大
中枢性疲労の増大
中枢性疲労の程度で言うと、反復限界を多く繰り返す総レップ法よりも、限界手前の反復を繰り返す総時間法の方がましだと思われる。とはいえ、総時間法は限界反復付近(RIR 1~2回)→小休息を長時間繰り返す手法なので、中枢神経系の疲労が大きくなるリスクはある。
これに、アイソレーション種目より疲労度が高いコンパウンド種目を組み合わせると、より中枢性疲労が増大する事が懸念される。
脳・脊髄の疲労である中枢性疲労は蓄積しやすく、筋肉への神経駆動を減少させたり、内分泌系・回復系・免疫系などに悪影響を与える。
協働筋活動の増大
コンパウンド種目は多関節種目なので、主働筋だけでなく協働筋も働く。
高重量の使用や筋疲労の進行で、主働筋の筋活動は停滞又は下がるが、協働筋の筋活動は増大する事が確認されている。
※こうなるところを如何に対象筋優位でコンパウンド種目を行え続けるかがボディメイクのトレ技術と言えるかもしれません。
確証はありませんが以上の2要素が組み合わさり、総時間法+コンパウンド種目では、対象筋の筋繊維動員の高まりが抑えられたり、過度な疲労を体に与えてしまったりする可能性があります。
ですので、私の場合は総時間法にアイソレーション種目を組み合わせて行うことが多いです。
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