【8章】パーソナルトレーナーのための運動心理学

 

1.運動におけるメンタルヘルス

定期的な運動への取り組みによって不安やウツの低減、心理的ストレス反応の低下、認知の強化が得られる。

⇒セロトニン(ホルモン)が分泌されるため

 

(1)運動によるストレス低減効果

  • ほとんどの人が生活の中でストレスを経験。時には症状が長期に渡る事がある。
  • 定期的な運動は、ストレスに関係する状態不安や特性不安の症状を緩和すると考えられる。
  • リズミカルな運動の刺激は不安の低減効果がある。リラクセーションを促進。

 

状態不安とは

実際に経験した恐怖などによって起こる不安。自律神経を介在する感情。

特性不安とは

性格的な要因による不安。心配性、神経症。パニック障害、強迫性障害なども含む。

 

(2)運動の抗うつ効果

運動は投薬治療と同じくらいの効果を持つ。

⇒セロトニン(気分を向上させるホルモン)やノルエピネフリンは、うつ状態で低下するが運動で上昇。

 

※運動によって改善された人は再発率が低下する。

 

(3)認知(判断の事)に関する効果

  • 知力を働かせる課題で、身体的に健康である人は非活動的な人よりも、より効果的に機能する。
  • 加齢に伴う反応時間が、運動を行ってない人と比べて行っている人は増加しにくい。
  • 複雑な認知テストで、身体的に健康な高齢者は非活動的な高齢者よりもメンタルパフォーマンスが高い。

 

参考

有酸素性運動30分~1時間で認知向上(判断、仕事能率向上)と言われてきたが、5~10分の運動でも同等との研究結果が発表されている。

 

 

2.目標設定

(1)フィードバックと強化のための目標設定

長期目標

最終的な目標。長期的に渡るトレーニングによって達成される目標。

短期的目標

当面の目標。長期的目標を達成する為に段階的に設定した目標。

 

※挑戦的な目標は成功の確率が50%程度のものが効果的。

 

(2)目標の種類

過程目標

クライアントが自己コントロールできる目標。自己の努力によって達成される。

例:そのエクササイズテクニックが向上した

 

結果目標

他者との比較によって達成度を判断する。勝利に焦点が当てられる。

例:最終的な目標クリア

 

パフォーマンス目標

自身の個人的なパフォーマンス基準を設定し、自己判断するもの。

例:挙上重量が伸びる

 

(3)目標志向性

目標を設定する上で、クライアントの個人差、パーソナリティにおける違いの考察。

 

課題思考

自身の以前の能力レベルに基づいてパフォーマンスの向上を判断。

自我志向・他者志向

他者のパフォーマンスとの比較によって判断。

 

(4)効果的な目標設定のためのアドバイス

  • 長期的目標を計画する。
  • 段階や短期的目標について理解する。
  • 簡単に達成でき、失敗の可能性に対するプレッシャーの少ない目標から始める。
  • 直接測定できるパフォーマンスや達成度を挙げる。
  • 目標への時間を割り当てる。
  • 認識するための方法を統一する。
  • クライアントがそれを達成できると信じてるかを確認する。
  • 優先順位が設定されるべき。

 

 

3.動機付け

(1)ポジティブ及びネガティブな強化と罰

ポジティブな強化

良い事に対して嬉しいものを与える事

例:3kg痩せたらケーキを与える。

 

ネガティブな強化

良い事に対して嫌いなものを取り去る事。

例:これをクリアしたら次のセットなし。

 

ポジティブな罰

悪い事に対して嫌いなものを与える事。

例:このタイムをクリアできないと1セット追加。

 

ネガティブな罰

悪い事に対して嬉しいものを取り去る事。

例:このタイムをクリアできないと食後のデザートなし。

 

(2)自己決定理論

内発的動機付け

エクササイズを行う事が好きで楽しいと思う感覚。(楽しいからやっている)

外発的動機付け

外的報酬を得るために行動したいという事による。(人からの評価が嬉しいからやっている)

 

※内発的動機付けは、外的報酬や表彰によって低下する事がある。

 

(3)いつ動機付けの努力に介入するか(準備段階の定義)

以下のステップをトランスセオリーモデル(準備段階)という。クライアントがこのモデルのどの段階にいるかを把握して、次のステップに進める様に変化を与えるなどして動機付けを行う。

 

step
1
無関心

身体活動を増やす意思がなく、活動しようと考えていない。

step
2
関心

身体活動を増やす意思があるが、まだ活動していない。

step
3
準備

週1回、中程度の強度の運動をしているが、ほとんどの日は活動していない。

step
4
実行

週5回以上、中程度の強度の運動を行っているが、まだ6か月未満。

step
5
継続

6か月以上、週5回以上、中程度の運動を行っている。

 

 

4.クライアントを動機付ける方法

セルフトーク

『俺はできる!』と自分自身で言い聞かせる。

 

メンタルイメージ

メンタルイメージはリラックスした緊張のない状態で行うべき。

リラックスを促進する方法として漸進的筋弛緩法が有名。

 

ビジュアライゼーション

試合前に展開をビジュアル的にイメージする。(イメージトレーニング)

 

あまり重要ではないので(笑)、練習問題なしです。NSCA公式テキストの章末問題や公式問題集で十分です。

 

 

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