このブログを読んで下さっているフィジーク選手の方から『この筋肉はなんですか?』とご質問を頂いたことがあります。その筋肉とはこれです。↓
その方の膨らみは乏しくてバックポーズの見栄えが悪く、改善したいとのことでした。
同じ疑問や思いを持つ方がいると思いますので、このご質問に対する回答をより具体的なかたちでシェアします。参考になれば嬉しいです。
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この筋肉は何なのか?
ご質問頂いた筋肉を改めて示します。赤い線で囲ってみました。↓
確かなことは言えませんが、これは脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)と下後鋸筋(かこうきょきん)に押し上げられている発達した広背筋下部の起始部エリアだと思われます。
<広背筋下部の起始部エリア>
<脊柱起立筋>
脊柱起立筋は、腸肋筋・最長筋・棘筋の3つのグループに分類される。
出典:荒川裕志 著 筋トレ 動き方・効かせ方パーフェクト辞典 P248 脊柱起立筋
<下後鋸筋>
出典:rehatora.net 下後鋸筋
深層→表層の順でいいますと、脊柱起立筋→下後鋸筋→広背筋の並びになっています。ですので、脊柱起立筋や下後鋸筋が発達していると、広背筋が下から押し上げられることになると思われます。
出典:中村直樹ら 著 筋電図を用いた下後鋸筋の運動学的役割に関する検証:ケースレポート 図2 下後鋸筋超音波画像
また、膨らんで見える他の要因はポーズのとり方だと思います。
下写真のポーズ(肘が前方にある)によって広背筋停止部エリアが前方へ移行して、後方にある広背筋下部の起始部エリアと段差が生じるので膨らんで見えるのだと思います。
肘を後方に引くと広背筋停止部エリアが後方へ移行して、広背筋下部の起始部エリアと並んで段差が無くなるので膨らみが目立たなくなります。
この膨らみを作るには?
前項の内容のうち『ポーズのとり方』は筋トレに無関係なので除外するとして、筋トレがこの膨らみを得るために貢献できることは以下の筋肉を発達させることです。
肥大させるべき筋肉
脊柱起立筋
(特に第11胸椎~腰椎エリア付近)
下後鋸筋
広背筋下部の起始部エリア
『下後鋸筋』は薄い筋肉で差ほど肥大しないと思われますので、『脊柱起立筋』と『広背筋下部の起始部エリア』の発達が特に重要だと考えます。
私の中で、これら筋肉を発達させる種目といえば『デッドロウイング』になります。
デッドロウイングを活用する
デッドロウイングとはその名の通り、デッドリフトとベントロウを組み合わせた種目です。
刺激する箇所:下背部
この種目で上述した膨らみ部分も含む『下背部』を刺激します。『下背部』の定義は人それぞれでして、まずは私が定義している『下背部』を視覚的に示しておきます。
具体的に筋肉名でいいますと、デッドロウイングにより『広背筋中部・下部の起始部付近』『下後鋸筋』『脊柱起立筋(特に腰部付近)』が刺激され、下写真の膨らみ作りに役立ちます。
デッドロウイングについて
この種目を初めて知ったのは大学生の頃で、アイアンマン誌に連載されていたマッスル北村さんの記事でした。
この種目を行った時に、それまで感じた事がない広背筋下部起始部エリアに強い短縮感が得られ感動した事を覚えています。
こんな感じで行ないます。↓
<スミスマシンで行なう場合>
出典:IRONMAN 特別編集 マッスル北村 伝説のバルクアップトレーニング P30 背中のトレーニング
マッスル北村さんはスミスマシンで行なっていましたが、私は当時、大学のトレ室にスミスマシンが無かったのでバーベルで行なっていました。それ以来、私はバーベルを使用してこの種目を行っていますが、どちらを選択しても良いと思います。
バーベルで行なうデッドロウイングの参考動画を載せます。↓
<バーベルで行なう場合>
6:05~6:45
出典:Stanimal TVチャンネル Debut prépa Mr Olympia 2019: Entraînement de DOS avec SHAWN RHODEN et Charles GLASS
デッドロウイングは上写真や動画の様に、引き始めはデッドリフトで開始し、途中から上体をのけ反らせながらベントロウの要領でバーを引き込みます。
動作の詳細です。私はバーベルで行なっていますのでバーベル・デッドロウイングを前提に、私の行い方で説明します。↓
事前準備と反復styleについて
事前準備
- パワーラックを使用。
- バーベルが脛中間位の高さになる様にパワーラックのセイフティバー高さを設定。
反復style
1回1回セイフティーバーにバーベルを置いて反復するデッドストップstyleで行なう(毎回ボトムで脱力する)。
引き上げ動作について
(1)デッドリフト動作
- セイフティバー上のバーベルをルーマニアンデッドリフトで膝上まで引き上げる。
- ルーマニアンデッドリフトは、股関節伸展動作を優位にしてバーベルを引き上げるリフティングなので、背すじを伸ばした状態(上体を反らし過ぎないし丸まらない状態)を維持して脚の付け根から上体を起こす。
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出典:Stanimal TVチャンネル Debut prépa Mr Olympia 2019: Entraînement de DOS avec SHAWN RHODEN et Charles GLASS
腰椎伸展が優位のデッドリフトの方が下背部をより刺激できますが、このフェーズ(ボトム~膝上)でそれを行なうと腰負担が大きいので、あえてルーマニアンデッドリフト(股関節伸展が優位)で行なっています。
ですが、ルーマニアンデッドリフト(股関節伸展が優位)といえど、脊柱の姿勢維持で脊柱起立筋がアイソメトリック収縮していますし、腰椎伸展が全く無いわけではありませんので下背部が刺激されています。
(2)ロウイング動作
- 「股関節からの上体起こし(股関節伸展)」と「腰部からののけ反り(腰椎伸展)」を行いながら、膝上にあるバーベルを肘で引く感覚で腿に沿って引き込む。
- 最適な「股関節からの上体起こし(股関節伸展)」具合と「腰部からののけ反り(腰椎伸展)」具合は人それぞれで、下背部の刺激からそれぞれ判断する。下背部に十分な刺激が感じられたら(強い短縮が感じられたら)、それ以上の「上体起こし」や「のけ反り」は必要はない。
- 上体起こし&のけ反った姿勢のまま、これ以上引き込めないところから最大努力でバーベルを2秒程度引き込み続けようとする(アイソテンションの追加)。この時、下背部の強い短縮感を1回1回逃さず感じ取る。
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出典:Stanimal TVチャンネル Debut prépa Mr Olympia 2019: Entraînement de DOS avec SHAWN RHODEN et Charles GLASS
「腰部からののけ反り(腰椎伸展)」はこの種目の大切な要素です。
「腰部からののけ反り(腰椎伸展)」によって脊柱起立筋の短縮性収縮をしっかりと引き出すことができます。それだけではなく、下後鋸筋の筋活動も引き出してくれます(Nakamura氏他3名の研究)。
また、ロウイング動作(バーベルを引く動作)で広背筋下部が筋活動しますが、「腰部からののけ反り(腰椎伸展)」によっても筋活動が引き出されるので(Ikutomo氏他5名の研究)、広背筋下部筋活動の更なる活性化が期待できます。
このフェーズ(ロウイング動作フェーズ)で「股関節からの上体起こし(股関節伸展)」を入れている理由ですが、ロウイング動作(バーベルを引く動作)で広背筋下部を刺激するために、負荷方向と広背筋下部繊維方向を合わせる目的で行なっています。
上述しましたが、下背部にヒットさせる最適な「腰部からののけ反り(腰椎伸展)」具合と「股関節からの上体起こし(股関節伸展)」具合は人によって異なりますので、下背部の短縮感をたよりに試して決めて下さい。
下ろし動作について
個人的に下ろし動作はあまり重視していません。気を抜いて下背部を痛めてしまうことが無いように慎重に動作を行うくらいです。
単純に、引き上げ動作の逆でバーベルをセイフティバーまで下ろせば良いです。デッドストップstyleで反復するので、下ろしたら一度完全に脱力してから引き上げ動作へ移行します。
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出典:Stanimal TVチャンネル Debut prépa Mr Olympia 2019: Entraînement de DOS avec SHAWN RHODEN et Charles GLASS
下ろし動作をあまり重視していない理由ですが、腰部保護目的で腰椎の屈曲(腰から背を丸める)ができず、下背部の伸張刺激が与えにくいからです。
また、ロウイングの戻し動作に着目しても、広背筋の伸張幅が小さい種目なので伸張刺激の期待度は私の中で低いです。
ですので、デッドロウイングは短縮刺激を重視して行っています。
以上です。
デッドロウイングは、バーを握る手幅によっても刺激が入る箇所に違いが生じますので、いろいろ試して下背部に入る手幅を決めて下さい。
下背部づくりの参考になれば嬉しいです。
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