
大胸筋下部を狙ったケーブルクロスオーバーは、その繊維走行を考慮して上から下に向かってクロスオーバーします。そして、教科書的に言われる動作のポイントとして『常に胸を張って行う』をよく耳にします。
こんな感じです。↓


出典:Draqkerrrチャンネル Arnold Schwarzenegger's Secret to Massive Chest & Striations Cable Crossovers With Ed Corney
教科書的な行い方は悪いものではありません。ですが、短縮刺激の面で勿体ない感があります。
本日は、その辺について解説し、そこから見えてくる改善点を反映した大胸筋下部用ケーブルクロスオーバーをシェアします。
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教科書的な大胸筋下部用ケーブルクロスオーバーについて
教科書的な行い方の『戻し動作(伸張刺激)』『クロスオーバー動作(短縮刺激)』について少し解説してみます。
戻し動作(伸張刺激)について

出典:Draqkerrrチャンネル Arnold Schwarzenegger's Secret to Massive Chest & Striations Cable Crossovers With Ed Corney
胸を張りながら戻すことで、ボトム位では大胸筋下部がしっかり伸びます。また、この種目はボトム位で高い負荷トルクがかかる構造になっています。ですので、大胸筋下部の伸展位で強い負荷がかかることになります。ちなみに、下方へ適度に体重をかけながら行うと、なお伸張感が増します。
筋肉が伸びた位置での負荷掛けや筋収縮は筋肥大を促進する可能性があるので、戻す動作全般で胸を張るということは良い選択だと考えます。
クロスオーバー動作(短縮刺激)について

出典:Draqkerrrチャンネル Arnold Schwarzenegger's Secret to Massive Chest & Striations Cable Crossovers With Ed Corney
胸を張りながら行うと大胸筋が緩まずにクロスオーバーできるので、高い張力が発生した短縮刺激が入ります。ですが、その箇所は限定的で、下図の黄色部(大胸筋下部の停止部側)にとどまる実感があります。

高い張力が発生した短縮刺激が停止部付近にとどまる理由は、クロスオーバー動作のフィニッシュエリアでも胸を張っていることで、適度な肩甲骨外転(肩甲骨の開き)と脊柱の屈曲(背を曲げる)が妨げられてしまい、大胸筋下部の短縮幅が小さくなってしまったからだと推測します(大胸筋下部の可動域が狭くなってしまった)。
適度な肩甲骨外転が妨げられると、上腕骨(停止部)を中心に向かって深く引き込めません。
適度な脊柱屈曲が妨げられると、大胸筋下部の起始部を第5、6肋軟骨と腹直筋鞘の前葉とすると、上腕骨(停止部)との近づきに余地を残してしまいます。
教科書的な大胸筋下部用ケーブルクロスオーバーでは胸張りを意識し過ぎてしまうあまり、これらが引き出されていないため、クロスオーバー動作のフィニッシュで大胸筋下部のもう一絞りが出来ていない状態だと言えます。大胸筋下部全体の短縮刺激が不十分となっている可能性があります。
短縮幅を増した大胸筋下部用ケーブルクロスオーバーについて

前項を逆手にとると、大胸筋下部用ケーブルクロスオーバーのフィニッシュエリアで胸張りを解除し、適度な肩甲骨外転と脊柱屈曲を入れながらクロスオーバー動作を行なうことで、大胸筋下部全体(停止部~起始部付近まで)で短縮刺激が得られるということになります。
『戻す動作』『クロスオーバー動作初動~中動』では胸を張り、『クロスオーバー動作終動』では胸張り解除で肩甲骨外転と脊柱屈曲を適度に入れる。これによって、教科書的な大胸筋下部用ケーブルクロスオーバーの良いところを残したまま、大胸筋下部の短縮幅を増すことができます。
ですが、肩甲骨外転と脊柱屈曲を過度に入れてしまうと大胸筋下部は緩んでしまうので注意が必要です。あくまでも" 適度 " にとどめます。それが適度が否かについては、大胸筋下部の収縮感で判断します。
これを体現している大胸筋下部用ケーブルクロスオーバーをいくつかシェアします。
Dorian Yates/Lee Priest のケーブルクロスオーバー
IFBBトップproビルダーだったDorian Yates氏とLee Priest氏のケーブルクロスオーバーが参考になります。
まずはLee Priest氏から。↓


出典:Sam's Fitness - Gym Equipmentチャンネル Lee Priest doing Cable Crossovers on Powertec Shape System
<動画>
2:56~
出典:Sam's Fitness - Gym Equipmentチャンネル Lee Priest doing Cable Crossovers on Powertec Shape System
胸張りを基本としながらも、クロスオーバー動作の終動では肩甲骨外転を適度に入れていることが見て取れます。
続いてDorian Yates氏のもの。↓


出典:Dorian Yates Nutritionチャンネル Dorian Yates - Blood & Guts - Chest & Biceps
<動画>
出典:How To Grow Musclesチャンネル Dorian Yates : On cable flys, I didn't waste time ramping up.
こちらも胸張りを基本としながらも、クロスオーバー動作の終動では肩甲骨外転と脊柱屈曲を適度に入れていることが見て取れます。
お二人とも肩甲骨外転や脊柱屈曲を巧みに取り入れています。ですが、意図してこれら動作を入れているわけでは無いと思います。大胸筋のフル収縮(できるだけ短縮させる)を意識して行った結果として、クロスオーバー動作の終動で肩甲骨外転気味・脊柱屈曲気味なフォームになっているという解釈が正しいと思っています。
座位で腿下に向かって行うケーブルクロスオーバー
流れてきたSNSのエクササイズ動画に目が留まりました。それはoats_baristaさん(お名前がわかりません)のもので、座位で腿の下に向かってクロスオーバーします。↓

<動画>
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これは良いなと思いました。
まず、座位で安定性が向上していることが挙げられます。狙った箇所に刺激が入れやすくなります。
そして、最大の利点は適度な『肩甲骨外転』『脊柱屈曲』を自然に誘発してくれるところです。下に向かって抱きかかえる様なフォームになるからだと思います。
『戻す動作』『クロスオーバー動作初動~中動』では胸を張れますし、『クロスオーバー動作終動』では胸張りが自然と解除されて肩甲骨外転と脊柱屈曲が適度に入れることができます。
ただ、体が大きく腿が太い方がこれを行なうと、腿の大きさが邪魔してクロスオーバー動作の可動域が狭まってしまいます。これでは本末転倒です。骨盤が過度に後傾しない程度に腿を上げた状態を作ることで解消できる場合があります(低めの台座に座ったり、足下にブロックを敷くなど)。
解消に至らない場合は、前項の立位で行ないます(Dorian Yates/Lee Priestパターン)。
参考:肩甲骨外転・脊柱屈曲の状態を作る筋肉

前鋸筋や小胸筋が肩甲骨外転、腹直筋や腹斜筋群が脊柱屈曲を作っていると考えられます。
これにより大胸筋下部をより短縮させるルート(軌道)が敷かれることになり、そのルート上でクロスオーバー動作の終動が行われるので大胸筋下部全体が短縮可能となります。
『肘曲げ』と『クロスオーバー具合』について

私の場合、教科書的なもの・今回のものに関係なく、ケーブルクロスオーバーは『肘は曲げる』『両腕をクロスさせない』で行ないます。
肘を曲げて行う理由は肘関節と肩関節を保護するためです。肘を伸ばすと大胸筋への負荷が大きくなりますが、肘関節と肩関節の負荷トルクや剪断力も大きくなって関節負担や不快度が増してしまいます。関節負担を安全なレベルまで低減させながら大胸筋に負荷掛けするため、肘は軽く曲げて行います。
クロスオーバー動作の可動域を両腕がクロスしない範囲にとどめる理由は、大胸筋の張力抜けを防ぐためです。筋肉は短縮しすぎると強い張力を生み出せない状態になります(筋生理的特性)。これを防ぐためにクロスオーバー動作は適度な範囲にとどめています(両拳が触れる程度)。また、前鋸筋や三角筋前部の活動増加を防ぐ意味もあります。
形をつくる種目として活用する

種目はマス系種目と形をつくる種目に分けることができます。
マス系種目とはしっかり力発揮できる種目で、大まかに筋量が得られます。基本的なコンパウンド種目がこれにあたります(ベンチプレスなど)。
形をつくる種目とはマス系種目で刺激が入りづらい箇所をピンポイントで刺激できる種目で(生来持っている筋肉の形を変えるという意味ではない)、その箇所の筋肥大が期待できます。
科学的根拠は少ないですが、形を作る種目の存在を裏付けるものが出てきています(Zabaleta-Kortaさん達のレビュー)。現時点では、上腕二頭筋、上腕三頭筋、大腿四頭筋で局所的な肥大が確認されています。
同じ筋肉でも種目や筋活動の様式(短縮性筋収縮や伸張性筋収縮など)によって、肥大箇所が異なる可能性があります。
教科書的なもの・今回のものに関係なく、大胸筋下部用ケーブルクロスオーバーは形をつくる種目に分類されます。基本的には、マス系種目であるベンチプレスやダンベルプレスを実施した後、刺激が乏しい大胸筋下部エリアを集中的に刺激するためのものとなります。
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